「お前また、剣術の稽古をサボったらしいな!」

僕の胸ぐらを掴み、父が持ち上げる。
筋骨隆々な父には似ず、ひょろひょろな僕は簡単に宙へ浮いてしまう。

「体調がすぐれなかったので」

「言い訳するなっ!」

がっ、と父の拳が僕の顔に当たり、眼鏡が吹っ飛ぶ。
ごりっと音がしたのできっと、奥歯が砕けたのだろう。

「そんなことで立派な帝国軍人になれると思っているのか」

「……申し訳、ございませんでした」

畳に額を擦りつけるようにあたまを下げた。
反省しているわけではない、そうしないと父の気が治まらないからだ。

「いまから私が稽古をつけてやる!
来い!」

「……はい」

父に手を引っ張られ、仕方なく立ち上がる。
と、父の背後にそれが立っているのに気づいた。
それは愉しそうになにかやっているが、眼鏡のない僕には見えない。