見える、見えない

なにもかも諦め、勝手に絶望してなにも見ようとしなかった、僕自身。

「もうこれからはなにも縛られない」

「それはよいことで」

可笑しそうにそれが、ころころと笑う。

「まずは好きなだけ本を読む」

「それはそれは」

「君も着いてきてくれるのだろう?」

「ああ。
主が死ぬまで、我は着いていく」

にっこりと笑った僕に、それも笑い返してくれた。


【終】