見える、見えない

「なら、ここから出ればいい」

どこからともなく現れた手が、僕の手を掴む。
そのまま手を引かれて歩いた。
ガシャン、錠前の落ちる音がする。
あたまを押さえられ、なにか――きっと牢の格子をくぐった。

「なにもかも捨てて自由になる覚悟はあるか」

さっきまで違い、それの声は酷く重い。

覚悟? 

覚悟などない。

けれどこのままでは僕は一生、死んだように過ごすだけなのだろう。

――ならば。

「僕は自由になる」

「……よろしい」

スパン!勢いよく障子が開いた瞬間、目の前の暗闇が一気に開けた。

「なら、我と共に行こうぞ」