見える、見えない

ぱたぱたと手の上に温かい滴が落ちてくる。
僕は――泣いていた。

「本当に見えないのかえ」

「見えぬ! 
全くなにも見えぬ!」

掴みかかろうと闇雲に手を振り回すが、宙を切るばかりでなにも当たらない。

「そもそもお前が奪ったのだろう!?」

「私はちぃーっと、(まじな)いをかけただけだがね」

「呪い?」

呪いとはなんのことだろう。
この目はもしかして、見えるのか。

「そうさ。
ヌシが自由になるための呪いを」

またそれがころころと笑う。

自由になるための呪い? 
それがなんで、見えなくなる?

「ヌシは自由になりたくないのかえ」

「……なりたい」