見える、見えない

自分が父の期待に応えられない存在だとわかっていた。
けれどそれでもまだどこか、いつか認めてくれるんじゃないかと期待もあった。

「僕は……僕は……」

膝を抱えて丸くなる。
いらない僕などもう、このまま死んでしまえばいい。
それにもう、好きな本も読めない。
いつか小説を書いてみたいという夢を潰えた。

「きっと君は、こんな僕を見て可笑しがっているのでしょう?」

見えない宙に語りかけるが、返事はない。



――ホー、ホケキョ。

遠くで、鶯の声がする。
冷え切った牢の奥で凍っている僕とは違い、外の世界には春が来たようだ。

「……僕には、関係ない」

もそもそと床の上で丸くなる。

すっかり僕は抜け殻のように過ごしていた。