見える、見えない

「ほら、見えているから答えられない」

それの言うとおりだ。
見えていないと答えるのは、見えているのと同義。

「我を見た者は生かしておけぬ」

なおも可笑しそうに笑いながら、それの手が僕の首にかかる。
少しずつ力が加えられ、息が苦しく意識が遠くなっていく。

……僕はこのまま死ぬのだろうか。

それはそれでいい気がした。
このまま生きていても望まぬ人生を死んだように歩いていくしかない。
ならばいっそ、いまここでこれに殺されるのもいいかもしれない。

「……興が削がれた」

唐突にそれは、僕から手を離した。

「ごほっ、ごほごほっ」

急激に吸い込んだ空気を処理しきれずに、咽せる。
視線を上げた先にはまだ、それがいた。

「けれどこのまま、生かしてもおけん。
……そうだ」