「さっきは、キツイ言い方してすみませんでした」
床を拭き終え、コウからタオルを受け取りながら、美月は少し気まずそうにそう言った。するとコウの大きな瞳がさらに見開いたかと思えば、瞳よりも大きな口がさらに大きく開かれた。
「いっ、いやいや、あれはうちの方が悪かったから気にせんといてー。むしろ気を遣わせてほんまにごめんなー」
美月はちょっと戸惑ったような表情を見せた後、意を決したように口を開いた。
「違うんです。みっちゃんって呼び方されると、私の母親を思い出すので嫌だったんです……」
コウは隣に立つタカに顔を向け、タカもコウを見つめ返した。
「美月ちゃんの母親って……?」
「あっ、関東に住んでます。ついこの間まで私は母親と一緒に住んでいたので」
コウとタカは再び顔を見合わせた。美月はそんな二人の脇を通り抜けて、ガスコンロの隣にあるケトルに手を伸ばした。
「あの、ちなみに、お湯を沸かすならケトルもありますので」
そう言ってから、美月はそれに水を注ぎ、電源を入れた。するとケトルはすぐに、シューシューと音を鳴らしながらお湯を沸かす準備に入った。
「タカさんとコウさんがどこまで私のことを玲子さんから聞いているかわからないのですが……私の両親は私が小学生の頃に離婚しました。父とはそれまで連絡を一切とってなかったのですが、どうしても私は母と一緒に居たくなくて、思い切って父に連絡を取り、こちらに引っ越してきたんです」
美月はタオルを掴み直し「これ、洗濯物のところに置いてきますね」と言って、一度その場を後にした。
その間もタカとコウは顔を見合わせたまま、どちらからともなくごちる。
「……なんか美月ちゃん、色々拗らせてそうやなぁ」
美月が戻ってきた時に、ちょうどケトルの中のお湯が沸騰し、電源ボタンのスイッチがカチリと音を立てて上がった。
「あっ、お二人とも座ってください。紅茶入れますが、何がいいですか?」
「ありがとー。うちはなんでもいいよー」
「僕もなんでもぉ」
美月は慣れた手つきで冷蔵庫の横にある棚を開け、その中から紅茶のポットと茶葉を取り出した。
透明な耐熱用の紅茶ポットの中にセットされている中の茶漉しを取り出し、丸いボール状のものを缶の中から一つポットの中に入れた。
沸騰しているお湯をその中に注ぎ入れたと同時に、棚の中からポット同様に透明なティーカップを三つ用意し、そばにあるオーブンレンジと壁の隙間に立てかけてあるトレイにそれらを乗せた。
ティーカップには別でお湯を注ぎ温めたら先にお湯を捨てて、ティーソーサーとティースプーンと砂糖も載せてタカとコウが座る席にトレイごと持っていく。
床を拭き終え、コウからタオルを受け取りながら、美月は少し気まずそうにそう言った。するとコウの大きな瞳がさらに見開いたかと思えば、瞳よりも大きな口がさらに大きく開かれた。
「いっ、いやいや、あれはうちの方が悪かったから気にせんといてー。むしろ気を遣わせてほんまにごめんなー」
美月はちょっと戸惑ったような表情を見せた後、意を決したように口を開いた。
「違うんです。みっちゃんって呼び方されると、私の母親を思い出すので嫌だったんです……」
コウは隣に立つタカに顔を向け、タカもコウを見つめ返した。
「美月ちゃんの母親って……?」
「あっ、関東に住んでます。ついこの間まで私は母親と一緒に住んでいたので」
コウとタカは再び顔を見合わせた。美月はそんな二人の脇を通り抜けて、ガスコンロの隣にあるケトルに手を伸ばした。
「あの、ちなみに、お湯を沸かすならケトルもありますので」
そう言ってから、美月はそれに水を注ぎ、電源を入れた。するとケトルはすぐに、シューシューと音を鳴らしながらお湯を沸かす準備に入った。
「タカさんとコウさんがどこまで私のことを玲子さんから聞いているかわからないのですが……私の両親は私が小学生の頃に離婚しました。父とはそれまで連絡を一切とってなかったのですが、どうしても私は母と一緒に居たくなくて、思い切って父に連絡を取り、こちらに引っ越してきたんです」
美月はタオルを掴み直し「これ、洗濯物のところに置いてきますね」と言って、一度その場を後にした。
その間もタカとコウは顔を見合わせたまま、どちらからともなくごちる。
「……なんか美月ちゃん、色々拗らせてそうやなぁ」
美月が戻ってきた時に、ちょうどケトルの中のお湯が沸騰し、電源ボタンのスイッチがカチリと音を立てて上がった。
「あっ、お二人とも座ってください。紅茶入れますが、何がいいですか?」
「ありがとー。うちはなんでもいいよー」
「僕もなんでもぉ」
美月は慣れた手つきで冷蔵庫の横にある棚を開け、その中から紅茶のポットと茶葉を取り出した。
透明な耐熱用の紅茶ポットの中にセットされている中の茶漉しを取り出し、丸いボール状のものを缶の中から一つポットの中に入れた。
沸騰しているお湯をその中に注ぎ入れたと同時に、棚の中からポット同様に透明なティーカップを三つ用意し、そばにあるオーブンレンジと壁の隙間に立てかけてあるトレイにそれらを乗せた。
ティーカップには別でお湯を注ぎ温めたら先にお湯を捨てて、ティーソーサーとティースプーンと砂糖も載せてタカとコウが座る席にトレイごと持っていく。