けれどそんな美月の心情とは裏腹に、タカはあっさりとこう述べた。
「いや、僕らも詳しくは知らんねん。なんせ突然玲子ちゃん家に押しかけたからなぁ」
そんなタカの言葉を続けて話すのは、コウだ。
「そうそう、なんせうちら急に家を追い出されて住むとこなくて、泣きつけたのが玲子ちゃんとこだけやったからなー」
「そう、でしたか」
なんとも肩透かしを食らった気分半分で、残りの半分はホッとして、美月は肩をなでおろしていた。
「ってか、立ち話もなんやから、座らへん?」
ダイニングの扉の前で立ち尽くしたままだった美月を見て、タカはどうぞどうぞとダイニングにあるテーブルを指差した。
「いやいや、なにあんたの家みたいな態度とってんねん。むしろここ、美月ちゃんちやしー」
「やからやんか。やからこの家の住人である美月ちゃんをこんな入り口で立たせてるんは可哀想やんかぁ」
「なるほどなー」
コウは納得したかのように、腕を組んでウンウンと首を縦に何度か振っている。そんなコウの様子を見ながら、満足したかのような顔でタカは両手を腰に当てて踏ん反り返っている。
美月はひとまずぺこりと小さくお辞儀をした後こう言った。
「お気遣いありがとうございます。でも、先に着替えたいので部屋に行きますね」
「確かにー! そりゃそうやわー。家帰ってきてこんなぺちゃくちゃおしゃべりに付き合わせてごめんなー。学校終わって疲れてるよなー? ほんまタカは気がきかんから」
「誰がやねーん! ってかどっちがやねん! コウの方が気いきかなさすぎやろ。現に席に座ることすら言わへんかったやんかぁ」
「それは美月ちゃんが部屋に戻りたいかなーって思てたからやん?」
「確かにー! とか叫んでたんはどこのどいつやねん!」
美月は二人の会話をただ見つめていた。すると二人もハッと我に返ったのか、美月を見つめてしばらくしてからこう言った。
「あっ、またうちら喋りすぎてたな。ごめんなー、うちらのことは無視して行ってくれていいんやでー。行きにくいんかもやけど」
行きにくいんかもやけど、と言った言葉は声のトーンを下げてそう言った。それはまるで心の声が漏れ出たような言い方だった。
「ほんまごめんやでぇ。僕らは多分口から生まれてきた類の生きもんやから、ほんまに気にせんと無視して行っていいよ。ってかコウの相手してたら一生話終わらんから」
「それはこっちのセリフや。タカの相手してたら人生どんだけ寿命あっても足りんわー」
「なんやとぉ!」
二人は再びやりとりを繰り返し始めた。ケンカするほど仲がいいと言う言葉があるが、二人を見ているとそんな言葉は二人のためのものなのかもしれない。と美月は思えるほどに、二人の会話はケンカしているようで、じゃれあっているように見えていた。
二人の会話が終わりそうにないのが見てとれて、美月は二人の言うように、会話の途中でその場を去った。
「いや、僕らも詳しくは知らんねん。なんせ突然玲子ちゃん家に押しかけたからなぁ」
そんなタカの言葉を続けて話すのは、コウだ。
「そうそう、なんせうちら急に家を追い出されて住むとこなくて、泣きつけたのが玲子ちゃんとこだけやったからなー」
「そう、でしたか」
なんとも肩透かしを食らった気分半分で、残りの半分はホッとして、美月は肩をなでおろしていた。
「ってか、立ち話もなんやから、座らへん?」
ダイニングの扉の前で立ち尽くしたままだった美月を見て、タカはどうぞどうぞとダイニングにあるテーブルを指差した。
「いやいや、なにあんたの家みたいな態度とってんねん。むしろここ、美月ちゃんちやしー」
「やからやんか。やからこの家の住人である美月ちゃんをこんな入り口で立たせてるんは可哀想やんかぁ」
「なるほどなー」
コウは納得したかのように、腕を組んでウンウンと首を縦に何度か振っている。そんなコウの様子を見ながら、満足したかのような顔でタカは両手を腰に当てて踏ん反り返っている。
美月はひとまずぺこりと小さくお辞儀をした後こう言った。
「お気遣いありがとうございます。でも、先に着替えたいので部屋に行きますね」
「確かにー! そりゃそうやわー。家帰ってきてこんなぺちゃくちゃおしゃべりに付き合わせてごめんなー。学校終わって疲れてるよなー? ほんまタカは気がきかんから」
「誰がやねーん! ってかどっちがやねん! コウの方が気いきかなさすぎやろ。現に席に座ることすら言わへんかったやんかぁ」
「それは美月ちゃんが部屋に戻りたいかなーって思てたからやん?」
「確かにー! とか叫んでたんはどこのどいつやねん!」
美月は二人の会話をただ見つめていた。すると二人もハッと我に返ったのか、美月を見つめてしばらくしてからこう言った。
「あっ、またうちら喋りすぎてたな。ごめんなー、うちらのことは無視して行ってくれていいんやでー。行きにくいんかもやけど」
行きにくいんかもやけど、と言った言葉は声のトーンを下げてそう言った。それはまるで心の声が漏れ出たような言い方だった。
「ほんまごめんやでぇ。僕らは多分口から生まれてきた類の生きもんやから、ほんまに気にせんと無視して行っていいよ。ってかコウの相手してたら一生話終わらんから」
「それはこっちのセリフや。タカの相手してたら人生どんだけ寿命あっても足りんわー」
「なんやとぉ!」
二人は再びやりとりを繰り返し始めた。ケンカするほど仲がいいと言う言葉があるが、二人を見ているとそんな言葉は二人のためのものなのかもしれない。と美月は思えるほどに、二人の会話はケンカしているようで、じゃれあっているように見えていた。
二人の会話が終わりそうにないのが見てとれて、美月は二人の言うように、会話の途中でその場を去った。