この質問が相手にいらぬ不快な気持ちを与えないことを祈りつつ、美月は二つの同じ顔をしたタカとコウを見つめた。
 すると先に口火を切ったのはコウだった。

「こんな質問きたけど、どうなんー? タカってそもそもどっちなんやったっけー?」

 ニヤリと笑いながら、タカに顔を向けた。すると同じくニヤリと笑ってタカはコウを見ながらこう言った。

「えー、僕もどっちか知らんわぁ。コウこそどっちなん?」
「そんなんうちに聞かんといてやー。うちかてわからんしー」
「じゃあ確認しあいっこでもしよかぁ」
「うち嫌やわー、そんなん恥ずかしいやんかー。自分で確認しーやー」

 コウは両肩を抱きしめるみたいに手で肩を抱き、体をくねくねとさせている。そんなコウの姿を見て、タカも肩を抱きしめながらくねくねと体をくねらせ始めた。
 美月はそんな二人の様子を漠然と見つめていると、二人は再び美月に向き直り、同じ方向に首を傾けながらこう聞いた。

「「美月ちゃんが確認してくれる?」」

 落ち着いた声のトーンで、二人はハモってそう言った。

「えっ? い、いやいや……」

(そもそもどうやって……?)

 美月は慌てふためきながら、両手をブンブンと左右に振った。するとタカとコウは吹き出したように声をあげて笑った。

「冗談やって、美月ちゃん安心して。うちらそんな下品なことしやんからー」
「そうそう。下品なんは言葉遣いだけやで」
「いやいやそれならうちらは別に下品じゃなくない? 言葉遣いは普通や。関西おったらそんなもん普通や。いやむしろ、京言葉も使えるんやさかい、上品なんとちゃいますのんー?」

 コウの物言いに、タカは再び笑った。美月からすれば何が面白いのかが分からず、関西のノリはテレビのお笑いやバラエティーで慣れてたつもりだったが、本当に単なる”つもりだった”のだと痛感した。

「あ、あのー……?」

 二人は会話に夢中になっていたのか、美月が口を挟むまですっかり会話を楽しんでいた。なんならば、美月の存在すら一瞬忘れていたんじゃないかというような反応すらも示していた。

「ああ、ごめんなぁ。僕らほんま話すの好きやからついついいつものノリで話してしもたわぁ」
「美月ちゃんってどこの子なん? 関西の出身じゃないんやろー?」
「あっ、はい。私はつい最近まで関東に住んでいました。って、玲子さんからはどこまで話を聞いていらっしゃいますか?」

 ちょっとした疑問だった。美月のことを知っている様子だが、どこまでの情報が玲子から聞かされているのだろうか。美月はドキドキと鼓動が早まる心臓を抑えながら、口元を引きつらせながらも必死に微笑んだ。