「実は今日、スマホを壊してしまったって、玲子さんからメッセージが届いてたかもしれないのですが、見れなかったので知らなかったんです」
「なんや、そうやったんやぁ」

 そう言ったのはタカと名乗った方。どちらも中性的な顔立ちをしていて、体格もほとんど同じ。身長差も無い様子から、見分けるのがかなり難しいと思いながら、美月は二人の顔をまじまじと見つめていた。
 そんな視線を受けても、二人は変な顔ひとつせず、目を細めてにっこりと微笑んだ。

「美月ちゃんってゆーんやろ? 僕らの顔そんなにおもろい?」
「……! い、いえ、そんなことは……」
「ってか美人な高校生にそんなに見つめられたらうち、照れてまうやんー」
「いやいや、むしろ風穴開いてまうわぁ」
「はははっ、それ間違いないわ。美月ちゃん、あんまうちらの顔見つめたらあかんよ。せやないとうちらの顔面えらい事なってまうからー」
「せやせや、ボコボコなるわぁ」

 二人が楽しそうに会話を繰り広げているのを見て、美月はただ呆然とその場に立ちすくんでいた。
 クラスメイトの会話といい、この二人の会話といい、関西の会話のテンポや独特なノリに美月は完全に置いてけぼりをくらっていた。

「ってか美月ちゃん、スマホ壊れたって言ってたけどそれ、早速新しいの(こお)たん?」

 突然話の話題にのぼった美月は面を食らいながら、タカが指をさしたのは美月が手に持つ新しいスマホが入った紙袋だ。

「あっ、そうなんです。私スマホなくてもいいかと思うのですが、やっぱり今みたいに急な用件の時に連絡つかないのも困ると思って」
「そうやなぁ。今の世の中スマホなかったら不便やわなぁ」

 タカは腕を組んでウンウンと唸っている。

「あの、ところで、ひとつ聞いてもいいですか……?」

 美月は勇気を出してそう言うと、タカとコウは二人とも同時に美月に向き合った。
 二人は美月のことを美人だと言うが、二人もなかなかのものだった。瞳は大きく、線が細い体つきをしながらも、瞳はどこか力強い。肩まで伸びるストレートな髪は、綺麗な金色だ。

「どうぞどうぞー」

 楽しそうにコウはそう言って、手のひらを上に向けて美月が話をするように促している。
 そんな様子にも美月は恐縮しながら、薄い唇はこんな言葉を吐き出した。

「お二人は男性なんでしょうか? それとも女性なんでしょうか?」