——ごめんね。
そう思ったと同時に、意識はどんどん闇の中に飲まれていった。
◇ ◇ ◇
今日から新学期。そして、新しい学校での生活が始まる。
カーテンを勢いよく開けると同時に、朝の日の光が力強く部屋の中へと差し込んだ。窓のすぐ隣、壁にかけてある姿鏡を覗き込み、制服の着崩れやメイクのヨレを手早くチェックする。
「おはよう美月ちゃん。その制服似合ってるじゃない」
「おはようございます、玲子さん。ありがとうございます」
美月は少しはにかんだ笑みを浮かべ、食卓に着いた。新聞を読みながら食パンをかじっている寝癖のついた父親は、美月の姿をちらりと見た後、再び新聞に視線を落としている。
「祐一さん、新聞見るのはいいけど、朝の挨拶はちゃんとしないと。それからちゃんと鏡見た? 寝癖すごいことなってるけど?」
玲子は美月の父親、祐一の頭部をスマホで写メを撮り、その画像がよく見えるようにそのまま新聞の上にポンと置いた。
「そろそろ出て行く時間でしょ? ちゃんと髪型整えて行ってよ」
「ああ、わかってる」
玲子のスマホの画像を見た後、のそりと立ち上がり、祐一は洗面台へと向かった。玲子に言われた通り髪を整えに行ったのだろう。
「美月ちゃん、今日から初めての学校でしょ? 緊張してる?」
「そうですね。少し……」
「大丈夫。女の子は愛嬌が大事だからね。美月ちゃんは美人だから、きっとにっこり笑っていれば、友達なんてたくさんできるわよ」
玲子はそう言って、美月の目の前に焼きあがったばかりのトーストをお皿に乗せて持ってきた。
「オレンジジュースだっけ?」
「あ、はい。私自分で入れます」
「そ、じゃあお願いね」
ガタッと椅子が床を滑る音を鳴らしながら、美月は立ち上がった。ずっとせわしなく動き続ける玲子に、どこか圧倒されていたのだ。固まったまま玲子に色々と世話をさせた自分を叱咤するように、美月は冷蔵庫へ向かい、100%オレンジジュースを空いたグラスに注いだ。
「私は今日ミーティングがあるから先に出るけど、学校頑張ってね。今日の帰りは遅くなるけど、ご飯は祐一さんと先に食べていてね。何かあったらメッセージ入れてちょうだい」
テキパキとカバンに荷物を詰め、スーツのジャケットを羽織る。ダークグレーのパンツスーツは玲子によく似合うと、美月はジュースを飲みながら思っていた。
スマホをジャケットのポケットに忍ばせた後、辺りを見渡して忘れ物がないか確認をしていた玲子は、洗面台から帰ってきた祐一の姿を見て微笑んだ。
「祐一さんも会社遅れないように気をつけて。じゃ、行ってきます」
そう思ったと同時に、意識はどんどん闇の中に飲まれていった。
◇ ◇ ◇
今日から新学期。そして、新しい学校での生活が始まる。
カーテンを勢いよく開けると同時に、朝の日の光が力強く部屋の中へと差し込んだ。窓のすぐ隣、壁にかけてある姿鏡を覗き込み、制服の着崩れやメイクのヨレを手早くチェックする。
「おはよう美月ちゃん。その制服似合ってるじゃない」
「おはようございます、玲子さん。ありがとうございます」
美月は少しはにかんだ笑みを浮かべ、食卓に着いた。新聞を読みながら食パンをかじっている寝癖のついた父親は、美月の姿をちらりと見た後、再び新聞に視線を落としている。
「祐一さん、新聞見るのはいいけど、朝の挨拶はちゃんとしないと。それからちゃんと鏡見た? 寝癖すごいことなってるけど?」
玲子は美月の父親、祐一の頭部をスマホで写メを撮り、その画像がよく見えるようにそのまま新聞の上にポンと置いた。
「そろそろ出て行く時間でしょ? ちゃんと髪型整えて行ってよ」
「ああ、わかってる」
玲子のスマホの画像を見た後、のそりと立ち上がり、祐一は洗面台へと向かった。玲子に言われた通り髪を整えに行ったのだろう。
「美月ちゃん、今日から初めての学校でしょ? 緊張してる?」
「そうですね。少し……」
「大丈夫。女の子は愛嬌が大事だからね。美月ちゃんは美人だから、きっとにっこり笑っていれば、友達なんてたくさんできるわよ」
玲子はそう言って、美月の目の前に焼きあがったばかりのトーストをお皿に乗せて持ってきた。
「オレンジジュースだっけ?」
「あ、はい。私自分で入れます」
「そ、じゃあお願いね」
ガタッと椅子が床を滑る音を鳴らしながら、美月は立ち上がった。ずっとせわしなく動き続ける玲子に、どこか圧倒されていたのだ。固まったまま玲子に色々と世話をさせた自分を叱咤するように、美月は冷蔵庫へ向かい、100%オレンジジュースを空いたグラスに注いだ。
「私は今日ミーティングがあるから先に出るけど、学校頑張ってね。今日の帰りは遅くなるけど、ご飯は祐一さんと先に食べていてね。何かあったらメッセージ入れてちょうだい」
テキパキとカバンに荷物を詰め、スーツのジャケットを羽織る。ダークグレーのパンツスーツは玲子によく似合うと、美月はジュースを飲みながら思っていた。
スマホをジャケットのポケットに忍ばせた後、辺りを見渡して忘れ物がないか確認をしていた玲子は、洗面台から帰ってきた祐一の姿を見て微笑んだ。
「祐一さんも会社遅れないように気をつけて。じゃ、行ってきます」