「あっ、私は関東の方から引っ越して来ました」
「京都もそうやけど、宇治といえばやっぱりお抹茶が有名やわなぁ」
「そうですよね……」
美月は辺りを見渡し、お店の忙しさを見やる。二人組の女性がソフトクリームを食べながら外のベンチに座っていたが、その人達はすでにいなくなっていた。
(元々カフェとか寄って抹茶アイスとか食べようと思ってたし、せっかくだから何か食べようかな)
美月はそう言ってメニューに視線を落とした。祖母や星夜には見えないように舌なめずりをした。
「じゃあ、せっかくなので……あっ、でも、きちんとお金は払いますから」
慌てて付け足すようにそう言うと、星夜の祖母は再びかっかっかと笑った。
「ええよ、お代は気にせんで。星夜が女の子を連れてくるなんか、小学生の頃以来やしなぁ」
「本当やわ」
星夜の隣からぬっと顔を覗かせたのは、さっき平等院に行く前にこの店で働いていた女性だ。
「東堂さんって言うんやろ? さっき星夜に聞いたんよ。このアホのせいでスマホダメになったんでしょ?」
さっき美月がこの女性を見たとき、もしかしたら星夜の母親だろうかと考えていたが、どうやら当たっていたようだ。
星夜の母親はそんな風なことを言いながら、ポコンと星夜の肩を拳で叩いた。
「俺のせいちゃうわ! こいつが歩きスマホしながら角曲がって来たから悪いねん。あたっ!」
星夜の母親は、再び星夜の肩をグーで殴った。今度はさっきよりも力強さを感じる叩き方だった。
「あんたも落ち着きないからやろ。いつも周りをちゃんとみんと、注意力も散漫やんか!」
「あっ、あの、スマホのことに関しては染野くんが言う通り、私が悪いので……」
美月は星夜が叩かれるたびに申し訳ない気持ちになっていた。実際に不注意だったのは美月の方なのだからと。
「まぁ、せめてそれならお詫びも込めて。茶そば食べて帰りいな」
かっかっかと笑う星夜の祖母は「よっこいしょ」と声を上げて椅子から立ち上がった。腰の曲がった星夜の祖母は、右手で拳を作り、腰をトントンと叩きながら、レジのすぐそばには段差があるが、すぐ隣には手すりが設置されている。
この茶屋の趣と手すりの真新しさが明らかにそぐわない。きっと最近取り付けたのだろう。それを掴みながら「よいしょっと」と言いながら星夜の隣を抜けて家の奥へと入って行った。
「京都もそうやけど、宇治といえばやっぱりお抹茶が有名やわなぁ」
「そうですよね……」
美月は辺りを見渡し、お店の忙しさを見やる。二人組の女性がソフトクリームを食べながら外のベンチに座っていたが、その人達はすでにいなくなっていた。
(元々カフェとか寄って抹茶アイスとか食べようと思ってたし、せっかくだから何か食べようかな)
美月はそう言ってメニューに視線を落とした。祖母や星夜には見えないように舌なめずりをした。
「じゃあ、せっかくなので……あっ、でも、きちんとお金は払いますから」
慌てて付け足すようにそう言うと、星夜の祖母は再びかっかっかと笑った。
「ええよ、お代は気にせんで。星夜が女の子を連れてくるなんか、小学生の頃以来やしなぁ」
「本当やわ」
星夜の隣からぬっと顔を覗かせたのは、さっき平等院に行く前にこの店で働いていた女性だ。
「東堂さんって言うんやろ? さっき星夜に聞いたんよ。このアホのせいでスマホダメになったんでしょ?」
さっき美月がこの女性を見たとき、もしかしたら星夜の母親だろうかと考えていたが、どうやら当たっていたようだ。
星夜の母親はそんな風なことを言いながら、ポコンと星夜の肩を拳で叩いた。
「俺のせいちゃうわ! こいつが歩きスマホしながら角曲がって来たから悪いねん。あたっ!」
星夜の母親は、再び星夜の肩をグーで殴った。今度はさっきよりも力強さを感じる叩き方だった。
「あんたも落ち着きないからやろ。いつも周りをちゃんとみんと、注意力も散漫やんか!」
「あっ、あの、スマホのことに関しては染野くんが言う通り、私が悪いので……」
美月は星夜が叩かれるたびに申し訳ない気持ちになっていた。実際に不注意だったのは美月の方なのだからと。
「まぁ、せめてそれならお詫びも込めて。茶そば食べて帰りいな」
かっかっかと笑う星夜の祖母は「よっこいしょ」と声を上げて椅子から立ち上がった。腰の曲がった星夜の祖母は、右手で拳を作り、腰をトントンと叩きながら、レジのすぐそばには段差があるが、すぐ隣には手すりが設置されている。
この茶屋の趣と手すりの真新しさが明らかにそぐわない。きっと最近取り付けたのだろう。それを掴みながら「よいしょっと」と言いながら星夜の隣を抜けて家の奥へと入って行った。