もう素直じゃないわね。ダンスが苦手なら苦手だと
言えばいいし。本当は、踊りたいくせに……。
でもいいわ。それなら……。

「そうね。ならお願いしようかしら」

そう言うと席を立った。あの男も照れくさそうに立つと
真ん中の曲が聴こえるところまで行く。
そしてお互いに向くと右手であの男の手を受け取り
お互いに腰に手を回した。
えっと……それから同時に右足を横に出してから
必死に覚えた振り付けを思い出した。

お互いにぎこちない。
緊張しているのか、またまた苦手だからなのか
それでも曲のリズムに合わせて踊る。
あ、ちょっと上手く踊れているかも……。
しかし油断した途端あの男の足を踏んづけてしまった。

「貴様……何をするんた?」

「あ、ごめんなさい……わざとじゃないの」

慌てて謝りもう一度やるが、また踏んでしまう。
しかもあの男は、痛さで振り付けを間違えてしまうし
するとお互いに顔を見合わせると笑い出した。
何よ……これ。全く滅茶苦茶じゃない。

「もう……せっかく練習したのに」

「いや。これはないだろ……」

あぁ、楽しい……。
パーティー前にトラブルあるし本番では、
ダンスも滅茶苦茶で散々なはずなのに
清々しいほど心は、楽しむことが出来た。
もう……それでいい。

お互いに振り付けを無視してダンスをした。
ステップも変えたり回ったりする。
その際に躓きそうになった。
するとあの男が寸前で支えてくれた。

「ドジ……」

「うるさいわね……もう」

そうお互いに文句を言いながらも抱き締め合う。
そして見つめ合うと自然とキスをした。
どちらからしたのか分からない。
ただ今では、自然とキスが出来る間柄になっていた。
軽い触れるだけのキスから深いキスに……。
庭のライトがキラキラと輝きながら、そこに寄り添う
私達は、誰よりもロマンチックだっただろう。