あの男は、渋い顔をしながらも食べる。
すると美味しかったのか表情がパアッと明るくなる。
あ、目がキラキラしている。

「う、旨……あ、まぁまぁだな」

必死に美味しさを隠そうとしているのだが
表情が隠しきれていない。
頬を赤く染めて味を噛み締めていた。
その姿を見て周りも私もクスクスと笑った。

「もう……相変わらず意地っ張りなんだから
もう1つ食べる?」

私は、笑顔でそう言うとあの男は、素直に口を開けた。
どうやら食べさせてもらうのは、気に入ったらしい。
何だか子犬でもあるけど雛鳥にも見えるわね。
そう思いながらまた1つ食べさせてあげた。

その姿を微笑ましく見ていたロンやゼトリック様達は、
頭を下げると城の中に戻ってしまった。
私とあの男の2人きりになってしまう。2人にされると
何だか意識をしてしまいドキドキと心臓が高鳴ってしまう。

「どうした?もう一口くれ」

「あ、はいはい」

それでもあの男は、もう一口と欲しがる。
ずっとこのまま食べさせてあげるのも照れくさいわね。
だからと言ってどうしたら……。
食べさせながら考えているとダンスの曲が変わった。
あ、この曲なら練習した時に使ったわ。

スパルタで何とか形にはなった。
上手くなったかと言えば微妙なところだが
とりあえず踊れるまでにはなった。だからまったく
披露しないのも残念な気持ちになるものだ。あ、そうだわ!

「ねぇ陛下。せっかく何だし、ここで私と踊らない?」

私から提案してみた。
庭でやるなら人前ではない分、踊りやすいし
人の目を気にしなくて済む。
ダンスに自信がない私には丁度いいわ。

「はぁ?こんなところでか?」

「あらダンスに自信がないの?陛下」

「バカ言え。ダンスぐらい俺にも出来るぞ!!
ちょっと俺には、向かないだけで……女と踊るしな。
だが貴様がやりたいのなら、やらんこともないぞ」