馬車は、停まる。そしてドアが開いた。
手を引かれ降りると何人かの兵や侍女達が
頭を下げて出迎えてくれた。
すると1人の男性がこちらに現れ頭を下げてきた。
身分の高いのだろう……騎士の格好をしている。
それに眼鏡をかけて少し長い髪を後ろに結んでいる。
かなり整った顔立ちの知的イケメンだ。
「ようこそいらっしゃいました。ユリア様。
いや、これからは皇后様で在らせられますね。
私は、陛下の側近で執事のロバートと申します。
ロンとお呼び下さいませ。
この度は、陛下の申し出を承諾下さり心から
お礼を申し上げます」
何が心からお礼を申し上げますよ。強制のくせに。
それよりも皇后ってどういうこと?
確か嫁に出す際は、皇妃だったはずだが?
皇后は、皇帝の正妃であり次に偉い権力者だ。
国では、皇后が1人。皇妃は、側室として数人
持つことが出来るらしい。ちょっと待って。
えっ?聞き間違い?
「……あの皇后って?皇妃じゃないの?」
「もともと皇后様として嫁いでもらうつもりでしたので。
急に皇后様と言い出すと嫌がると思い伏せてました。
さぁ奥のホールでお待ちです。ご案内致します」
そのロバートという男は、ニコニコしながら
私を案内すると言ってきた。
ちょっと笑顔で、さらっと凄いこと言わないでよ!?
逃げ出すって……確かに逃げ出したいけど。
私は、思わず心の中でツッコんだ。
しかし、どちらにしろ今は、敵の敷地内なので
逃げ出すことも出来ない。
仕方がなく警戒しながらホールに向かった。
広い敷地内に豪華な置物……シャンデリア。
まるでおとぎ話に出てくるお城だ。
あ、いや。そうなんだけど……。しかし凄いわね。
アースの宮殿も素敵だったけどかなり古めだ。
しかしここは、綺麗にしてあった。裕福の差か……。
キョロキョロと辺りを見ていたら大きな扉まで来た。
ここに……あの極悪非道な男が居るのね?
私は、思わず息を呑んだ。
そして兵達がその大きな扉を開けた。
体育館の何倍もありそうなホールの中心。
王座の席に皇帝らしき人物が偉そうに座っていた。
黒髪で緑色の目付きの悪い鋭い眼差し。
鼻筋が通って顔立ちが整っている。
そこら辺の芸能人よりもイケメンだった。
しかし黒色で騎士みたいな服に黒いマント。
オーラは、確かに極悪非道な雰囲気を漂わしていた。
例えるなら魔王……そんな感じだった。
「うわぁ…まさに極悪非道……」
私よりアミーナがボソッと口に出していた。
アミーナ!?だから余計なこと言わないで。
私は、慌てて教えられたようにドレスを広げ頭を下げた。
「陛下。ユリア・アース第一皇女をお連れしました」
ロバートって人が紹介をする。
するとアディ皇帝陛下は、ため息を吐いたように呟いた。
「顔を上げろ。よく来たな。
さぞかし悲痛な思いで来たのだろうな」