私は、慌てて行こうとするあの男の腕を掴んだ。
「待って!」と言いながら……。
あの男は、驚いた表情を見せてきた。

「違うの。そんなことを言いたくて来た訳じゃないの。
あなたに誤解を解きたくて……」

「誤解だと……?」

「私は、確かにミウラって人が好きだったわ。
でもそれは、片思いなだけで……付き合うとか
気持ちを打ち明けることすらしてない。
だけど、それは過去の話……今は違う。
私は、婚約を破棄したいなんて本当は、思っていないわ」

私は、思いっきり気持ちを打ち明けた。
そして気づかされる。
今の言葉に嘘は入っていないことに……。
私は、三浦君を過去の人として見ていた。
今は……違う。その気持ちにあの男が居るからだと
自分で言っているようなものだ。

私は……この男のことを好きになっていた。

あの男は、その言葉を聞くと下を向いて
身体を震わせた。そして私を強く抱き締めてきた。
まだ震えている……もしかしてまた泣き出したのかしら?

私は、ソッと顔を覗いてみる。
あ、やっぱり……彼の目には、涙が流れていた。
本当……どうしようもない人。
だがそこに人間らしさと言うのだろうか?
あの男の……本音が隠されていた。

私は、ソッと唇にキスをする。
初めてだ……自分からキスをするのは。
すると目を一瞬丸くされるが頬が赤く染まってきた。
分かりやすいわね……本当に。

フフッと笑うと今度は、頬に。
するとあの男は、そのまま私の唇にキスをしてきた。
軽いキスから深いキスになっていく。
私は……あの男を受け入れた。

その後は、一緒にお風呂に入り直した。
あの男は、気を良くしたのか私を膝の上に座らせると
何度もキスをしてきた。
そして首筋……胸にずらしてきた。

「ちょっと……お風呂は、嫌だってば」

「心配するな。ベッドの上でも抱いてやる」

そんなことを言いながらさらにキスをしてくる。
もう……まったくと呆れながらも私は、
腕を絡めたのだった。