「はい。陛下的には、甘いのが好きなのは、
女子供だけだとか、変な見栄を張ってしまい
甘いものを滅多に口にしませんが。
誕生日やクリスマスなど特別だからと理由をつけて
お召し上がりになります。
陛下にとっても街の人にとっても大切な日。
あまり刺激されますとパーティーに支障が出て
中止になりかねませんわ」

エレンの言葉に重要性を知る。
甘いものが好きなのは、女子供だけって……どんな
偏見の仕方よ?
私の世界では、スイーツ男子とかあるのに。
相変わらずややこしい男ね……。

しかし、そこまでして食べないってことは、
その日は、大切にしてきたのだろう。
だとしたら喧嘩をしている場合ではないはずだ。
偉い方も招待されて来るのに……。

「ユリア様。やはり謝れた方がいいのでは?」

「……そうね」

アミーナに言われて私は、渋々納得する。
自分でも言い過ぎたと思っていたから
ちゃんと謝らないといけない。

何処で謝るかとなったらアミーナに入浴の時がいいと
言われた。何故?と思ったが、彼女の目的は
何となく分かったが、あえて黙っておくことにした。
下手なことを言うとうるさいし余計に
ややこしいことになりそうだから……。

そしていつもより早めに入浴にしてもらう。
ドレスを脱ぎバスタオルを巻くと恐る恐る入っていく。
あの男は、すでに入浴していた。あ……やっぱり
落ち込んでいるみたいで体育座りになっていた。

怒られるとしゅんと落ち込む姿は、やっぱり子犬っぽい。
私が近づくと気配を察してか慌ててこちらを見てきた、
えっ……泣いていたの!?
振り向いたあの男の目には、大粒の涙が溢れていた。
汗……?いや、どう見ても涙だ。

するとハッとしたのか慌てて腕で涙を拭うと
ギロッと私を睨み付けてきた。

「な、なんだ!?貴様……婚約破棄しておいて
図々しく風呂に入ってきたのか!?」

しかし口調は、いつもの喧嘩腰だった。
涙をいっぱい溜めながら言われても説得力がないが……。

「別に……私もお風呂に入りたくて」

「だ、だったら俺が出てからにしろ」

必死にやせ我慢しているのが分かる。
それに気づかれたくないのか立ち上がると
湯船から出てきてしまう。あ、行っちゃう!!
このままだと仲直りが出来ないままだ。