その年配の女性は、嘘をついているようには
見えなかった。何だかくすぐったくて
不思議な気持ちになった。ドキドキしてくる。
すると1人の若い女性が赤ちゃんを連れてあの男の前に来た。
「陛下。息子が産まれたんですよ。
良かったら抱っこしてあげて下さいな」
「はぁっ?何で俺がこんなガキ相手に……」
赤ちゃんを抱くのを拒むあの男だったが真剣に見ていた。
すると赤ちゃんがその表情に驚き泣き出してしまった。
そうなると慌て始めた。
「ちょっ……泣くな。おい。貴様俺に向かって
泣くとはいい度胸だ。褒美をやろう。だから泣き止め」
必死に赤ちゃんに言い聞かしてなんとか
泣き止んでもらおうとする。それを見て周りも
そのお母さんである女性もクスクスと笑い出した。
その姿は、極悪非道な最悪な男ってよりも
民に愛される皇帝の姿だった。
まさに理想の皇帝陛下だ。私は、その姿を見ていて
気づくとクスッと微笑んでいた。
その後も子供達が遊べとせがんできたが拒否ると
「こんな遊びも出来ないのか?だせー」と言われ
ムキになり勝負を挑んでいた。
子供っぽい一面を持ち合わせており民に愛されてる。
彼の本質を見たような気がした。
「まったく。アイツらは、俺を何だと思っているんだ?」
「あら。皆に愛されていていいじゃない」
「はぁっ?俺は、別に……民に愛されたい訳ではない。
民や他国に俺の権力や強さを見せつけ
極悪非道で最強の皇帝だと思わせたいだけだ!」
自信満々と語るあの男にクスクスと笑ってしまう。
あんな姿を見せられたら、その言葉が可笑しくて
何だか和んでしまう。
あぁ……可笑しい。
あの男と隣で商店街を歩いているとある武器屋が
目に入った。あ、あそこならもしかしたら。
「あ、ねぇあそこに寄りたいわ」