「はぁっ?貴様……自分で何を言っているのか
分かっているのか?」

あの男は、驚きながらそう言ってきた。
もちろん。そんなことは分かっている。だから
行きたいと言っているのよ!

「えぇ。ここに嫁いでから一度も街とか
出たことがないのよ!?皇后になるとしても
外の世界を知らないのは、変じゃない?
私も街に下りてみたい。お願い!!」

私は、必死に頼み込む。せっかくのチャンスだし
竹刀を見つけたいし。あ、それに……元に戻る情報も
見つかるかもしれないわ。
バタバタといろんな事があり過ぎて忘れかけていたが
私は、この世界から抜け出す方法も探さないといけない。

そうよ……元の世界に。
そう思っていたら心の中で何かがズキッと痛む思いがした。
何故なのか分からないため一瞬戸惑ってしまう。
するとそれを見ていたあの男は、ハァッ……と
ため息を吐いた。

「なら……好きにしろ。おい。
馬を出してやれ」

「えっ?あ、あの……私馬に乗れない」

「はぁっ?」

驚いたように言うかお姫様って乗馬出来るものなの?
馬車に乗るイメージが強いが
どちらにしても私は、それに慣れていない。
あ、そうだわ。それなら……。

「だったら乗せてよ!あなたの馬に」

名案とばかりに私は言った。と言っても
あの男の後ろに乗せてもらえばいいと思ったからだ。
しかし呆れながらも乗せてもらうことになったが
後ろではなく前だった。あれ……?

「あ、あの……これはさすがに恥ずかしいのだけど」

「仕方がないだろ。後ろだと不慣れな貴様だと
危ないし、もし敵が来たら守りにくい」

いやいや。そんな急に敵なんて来ないから。
それに前だと余計に馬の振動や走る景色が怖くて
私は、あの男の胸元にしがみついてしまう。
なので余計に心臓がドキドキと高鳴ってしまい
振動が聴こえそうだ。

「お、おい。あまりしがみつくな!?」