私は、バスタオルを巻き直すと
じわりじわりと近づいてみる。すると思った通り
後ろに後退りしていた。
「おい。何故近づいてくる……?」
「あなたこそ。何で後退りするのよ?」
「う、うるさい……そんなの俺の勝手だろ」
ムキになって言い返してくるが、明らかに
動揺しているのが分かる。頬も赤く染まっていた。
さらに近付こうとした。だが横っ腹の痛みが走り
思わずよろめく。すると慌てたように私を支えてきた。
あの男に抱き締められた状態になってしまった。
お互いに固まってしまった。
自分の心臓の音が聞こえてこないかと心配になる。
慌てて離れようとするとあの男は、何を思ったか
離れようとする私をギュッと抱き締めてきた。
「えっ……ちょっと……」
「……すまない……」
えっ……?
するとあの男は、私に構わずに唇にキスをしてきた。
思わない言葉とキスに動揺する。
それは、キスをしてきたことか、また蹴ったことの
謝罪の意味かは、分からない。
だが重なる唇は、甘く優しい。
唇を離すとまた重なるようにキスをする。
今度は、深く求めるように……。
しばらくキスをしたらあの男は、私を膝の上に
座らせ胸を含む。お風呂もこの男も嫌なのに……。
そう思うのに抵抗する気力が起きない。
嫌ならまた平手打ちすればいい……。
嫌だと叫んで……それから……。
「イタタッ……」
「痛むのか?」
「痛いから離して……」
「だったらその首に絡む手を離せ。
それだと俺が身動くことも出来んだろーが」
お互いにあー言えばこう言う。
だが離せとか言いながらもお互いに離そうとしない。
気づけばお互いに重ねていた。