何故だか物凄くキレられた。だが怒る理由が
理不尽なキレ方ではなく私を心配してだった。
女の身体や顔に一生傷をつけたらどうするかって……。
大げさでもあるが、何とも紳士的な。

極悪非道な皇帝を通したいと言っている人物だとは
思えないほどだ。だからなのか耳まで真っ赤にして
怒ってくるあの男に笑いが込み上げてきた。
言っていることが真逆……。

「おい。俺は、怒っているのに何故笑う!?」

「だ、だって……真逆なんだもん。
大げさよ……これぐらいの傷なんてすぐに治るわ」

「わ、笑うな!?それに馬鹿言え。
あんな青紫にしておいて……女がそれでいいのか!?
本来なら大事件だぞ!!」

ちょっ……大事件って。あぁ……可笑しい。
私は、本来お転婆とか男女みたいだと散々言われてきた。
だから私を女扱いをしてくる人なんて居なくて
唯一女性扱いしてくれたのが三浦君だった。

まさか、ここにも居たなんて。
私を女性として心配してくれる人が……。
何だか嬉しくて、くすぐったい気持ちだった。

「だから笑うなって……」

「もう……だから大げさだってば。
こんな傷ぐらい数日経てば元の色に戻るわよ」

そう言いながらバスタオルを少しめくり
横っ腹を見せた。すると、どうだろうかさらに
顔を真っ赤にさせて慌て出すあの男。

「貴様……恥を知れ。女が自分から裸を見せる奴があるか!!」

「あら?あなたは、散々見たじゃない。私の裸」

「あ、あれは……不可抗力だ。べ、別に貴様なんかの
裸を見ても何とも……思わないぞ。俺は、皇帝だから」

そう言うあの男だが目線は、完全に私から外されていた。
目線を合わせないように横を向いて狼狽えていた。
分かりやすい……凄く。
こういうあからさまな態度を見ていると
ついからかいたくなってくるわよね。
変な好奇心が出て来てしまう。