浴室の方に行くと確かにあの男が入浴していた。
着ていた服が脱ぎ捨ててあった。
何だか意識すると余計に恥ずかしくなってくる。
私は、戸惑いながらも着替えの服を棚に入れると
アミーナ達に手伝ってもらいながらドレスを脱いだ。
バスタオルで身体を隠すと恐る恐る浴室に入っていく。
いつ入っても豪華で広い。しばらく歩くと
あの男が湯船に浸かっている姿が見えてきた。
湯気で少し見にくいが、よく見ると落ち込んでいるようだった。
湯船の中で体育座りしながらしゅんとしていた。
えっ?体育座り!?
落ち込んでいそうだとは思っていたが意外な
落ち込み方に衝撃を受ける。何それ……可愛い。
不本意ながらも可愛いと思ってしまった。
もう少し見ていたいと思っていたら
気配に気づいたのかパッと私の方を見るように振り返ってきた。
「な、何で貴様が……ここに!?」
私が入ってきたからかなり動揺しているようだった。
何故と言われてもなりゆきなのだが……。
私は、心臓がドキドキしながらバスタオルを
ギュッと握り締めると湯船に入ろうとしゃがむ。
だがしゃがむと横っ腹の痛みが走ってくる。
「イタタッ……」
するとあの男は、ハッとしたのかパッと横を向く。
「な、何の用だと聞いている。
そんな痛いのなら……部屋で大人しく休んでおけ」
ぶっきらぼうになりながらも嫌味を言ってきた。
部屋で休めと言うところが本来の性格が出ている。
私は、グッと我慢するとそのまま湯船に入り隣に座った。
「嫌よ……私もお風呂に入りたかったの。
それに、これ……あんたのせいじゃないから」
ぶっきらぼうなのは、私もだ。
つい憎まれ口を叩きながらもそう返した。
あの男は、驚いたようにえっ?と言ってくる。
「これは、私が自分でやりたいと言って出来た傷。
あなたのせいじゃないし、私個人の責任よ。
だから……その……気にしていたらごめんなさい」
やっと自分から謝ることが出来た。
すると一瞬驚いて固まっていたあの男だが
ハッて気づいたのか慌てて立ち上がりこちらを見てきた。
「そ、そんなのは、男の俺が悪いに決まっているだろ!?
貴様は、嫁に来たとしても女なんだぞ!?
嫁に入ってきたばかりの女の身体や顔に一生残る
傷でもついたらどうする気だ!!」