「チッ紛らわしい。何で貴様がここに居るんだ?」
「何故って……それは昨日……」
舌打ちをして聞いてくるあの男にムカついて
言い返そうとするが、昨日の事を思い出して余計に
恥ずかしくなる。
するとドアからノックされてミーナとエレンが
部屋の中に入ってきた。
「おはようございます……あらまぁ」
「俺は……風呂に入ってくる」
あの男は、近くに脱ぎ散らかしたバスローブを拾うと
羽織りながら部屋から出て行ってしまった。
えっ……ちょっと!?
謝りもしなければ、そのまま放置にされてしまう。
唖然としているとアミーナとエレンは、
ニコニコしながら私のドレスなどを持ってきた。
「おはようございます。ユリア様。
お目覚めは、いかがですか?いい朝ですね」
何もかも知っているような口ぶりだ。
昨日何があったのかは、この2人なら当然
理解していることだが、それが余計に恥ずかしい。
「最悪よ……起きたら下腹部が痛いし
寝ぼけたアイツに急に刃物を向けられるし」
本当に……最悪だ。
こんなつもりはなかった。初めてなのに
よりにもよって大嫌いなはずの男に捧げてしまった。
なのに刃物まで向けられるとか……何なの?
するとエレンは、靴を下に置くとバスローブを拾い
私の肩にかけてくれた。
そしてクスッと微笑んできた。
「それは、仕方がありませんわ。
陛下は、命を狙われる身。いつ何時敵が潜入して
自分の身に危険が及ぶか分かりません。
なので、いつも枕元にナイフを装備したり
寝る時も警戒して眠りについています」
「えっ……そうなの?」
「はい。国が大きくなればなるほど
恨まれたり疎まれたりすることも多くなりますから。
陛下ご自身もそれを十分に理解していますわ。
でもユリア様がそばに居て下さるのなら
昨日は、ぐっすりと眠れたかもしれませんわね」
フフッと笑うエレンに私は驚いた。
皇帝になるって……そんなに大変なんだと。
寝ている時でも自分の命を狙われるかもしれないなんて
普通に考えたら怖いことだ。
アイツ……もしかして普段は、あまり寝られてないの?