そういうのは、恋愛ノベルだけの夢物語だと思っていた。
現実に無いと思っていたのに……まさか
自分がそれを体験するなんて。

ど、どうしたら元の世界に戻れるかしら？
いやいや。そもそも戻れるの？これって……。
頭の中が混乱してきた。

「あ、あなた。どうしましよう。
娘が変になってますわ」

「これは……一体。そこまでショックで
記憶を混乱させて無くしてしまったというのか？」

その姿を見たこの世界の両親は、動揺していた。
そして、とにかく休めと言われ私は、
部屋に取り残されてしまった。

とにかく頭を整理させなくては……。
必死に頭を整理させる。私は、櫻井百合愛(さくらいゆりあ)。
それは、間違いないわね。記憶もあるし。
で、それから記憶を頼りに思い出していく。
あの時……黒猫を助けた後、確かに声が聞こえた。
あれは……黒猫？助けると言っていたわ。
だとするとそのせいで、ここに飛ばされたってことに
なるわよね？内容的にも……。

それなら黒猫を見つければ、元に戻れるとか？
いや。そもそも何処に居るのかも分からない。
異世界に居るのか、またまた元の世界にまだ居るのか
それに、そうなると元に戻れる間は、
私自身どうにかして生きていかないとならない。
恋愛ノベルなら、なおさらだ……。

すると誰かがドアをノックしてきた。
誰かしら？こんな時に……。
私は、返事をすると1人の女性が入ってきた。
年は、同じぐらいだろう。髪を1つにアップして
メイドの服を着ていた。ここの使用人だろう。

「ユリア様。お風呂の用意が整いましたので
身体を温めてゆっくりなさって下さいませ」

「えっ……えっと……あなたは？」

「私は、ユリア様の専属侍女のアミーナです。
記憶がある時は、アミーナと呼ばれ
親しくさせて頂きましたわ。どうぞ……お見知りおきを」

スカートを広げ挨拶をするアミーナって子。
私の専属侍女……。
どうやら私は、身分の高い家柄の娘らしい。
それなら彼女に聞けばここは、どういう人が住み
私やどういう国か分かるかもしれないわ。

早速お風呂に入りながらそれを聞いてみた。
ただし入るのは、私だけ。
アミーナは、入る私のお世話をする状況だったが。


「そうですね……記憶に無くしたユリア様は、
覚えていないと思いますがあなたの名は、
“ユリア・アース”第一皇女様でございます。
そしてここは、アース帝国。さほど大きくありませんが
活気のある国でしたわ。しかし何度かの戦で
昔から仲が悪い敵国・エミリオン帝国に敗れ
エミリオン王国の配下にさせられてしまいました」