覗かれたことをバレた陛下は、慌てて
持っていたホウキで掃くふりをしていた。
たまたま掃除をしていたと言い訳でもしているのだろう。

いやいや。それおかしいから……。
陛下でしょ?あなた……一国の皇帝陛下がホウキで
掃いていたら不自然だから
私は、呆れながら見ているとエレンとアミーナは、
同じように見てクスクスと笑っていた。

ハァッ……とため息を吐きながら花束を見る。
どうやら私のために選んでくれたのは、本当のようだ。
本来なら突き返すところだ。だが……花に罪はない。
それに何となく悪い気はしなかった。

「エレン。これあなたに渡すわ」

「えっ……?」

「この花を花瓶にでも生けてちょうだい。
私は、そういうの苦手だから」

「は、はい。承知しました!」

エレンは、嬉しそうにニコッと笑うと
その花束を受け取ってくれた。
これは、あの男がくれたから嬉しかった訳ではない。
ただ花があまりにも綺麗だったからだ……。

その後は、素振りの練習を再開させた。
体力的にまだまだ鍛え直さないといけないけど
振り方や感覚は、脳が覚えている。
後は、それに似合う体力作りを中心にやれば
元の身体ではなくても十分にやれるだろう。

十分に汗を流すと私は、お風呂に入り着替えると
部屋でストレッチをしていた。
急に身体を動かしたからよくストレッチと
マッサージをしないと次の日には筋肉痛になる。

背中を伸ばしていたらエレンが部屋に入ってきた。
しかし花瓶を持ちながらクスクスと笑っていたが。
何だか嬉しそうだった。

「花瓶ありがとう。どうしたの?嬉しそうに」

「あ、すみません。いえ……花瓶を持って
歩いていたら陛下に呼び止められて。どうやら花束を
私に渡されたことを突き返されたのだと
思われたらしくて理由を聞きに来たんですよ。
落ち込みながら……で私が花瓶を頼まれたからですと
お教えしましたら嬉しそうに戻って行かれましたわ。
気に入って下さったのが嬉しかったのでしょうね」

わざわざ聞いたの……あの男!?
しかも嬉しそうに戻って行くって……。
別に気に入った訳ではないのだけど。