私は、あの男の言動に戸惑っていた。
話と大分違うからだ。私達の国では、極悪非道で
血も涙もない陛下だと聞いていた。
なのに会うとどうも真逆のタイプに思えた。
あれは、演技?私を油断させるための……。
「ユリア様。お湯加減は、いかがですか?」
「丁度いいわ。ありがとう」
現在お風呂に入っていた。
さすが宮殿のお風呂は凄い。豪華な置物に
あちらこちら金ぴか。お風呂も浴室も銭湯や
ホテルの大浴場よりも広い。
この面積だけで部屋が出来るだろう。
湯加減もいい……。
「それは、良かったです。これから
夜伽があるのですから綺麗になさらないと」
よ、夜伽!?
エレンの言葉に驚いた。そ、そうだった。
嫁いだってことは、少なくともあの男の
夜の相手もしなくてはならない。
いや。しかし人質として来たのだし
あ、そうだわ。ベッドで抱かないと宣言してたじゃない!!
「そんなことはしないんじゃないかしら?
あのおと……じゃなかった。
陛下は、私を抱かないと言っていたし。
私に興味がないのよ」
そ、そうよ……あの男は、私を女だと見ていない。
だから抱かれる必要もないわ。
するとエレンは、クスクスと笑ってきた。
「フフッ……ご冗談を。陛下のアレは、ただのツンデレで
本音は、そんな事は思われていませんわ。
今頃ドキドキしているに違いありません」
エレンは、やんわりと否定した。
そうじゃないと困るのよ!!
私は、心の中でそう叫んだ。
だって私は、まだまともな交際経験がないのよ!?
未だに片思いのままだし交際だって0。
そんな夜伽だなんて夢のまた夢だ。そんな私が
好きでもない男とデキる訳がないじゃない。
しかしそんな不安を余所にエレンとアミーナは、
お風呂から出た私にさっさとバスローブを着せてきた。
このままでは私の純潔の危機だ。
アミーナを見ると頑張れとエールを贈られた。
いや……やめさせてよ!!
ど、どうしよう。結局私1人で寝室で待たされた。
この部屋は、あの男と私のための寝室らしい。
自分の部屋に帰らせて……。