えっ……?
堂々と顔色を変えずに言い切るロンの態度に驚く。
するとあの男は、勢いを失ったのか
「そ、それぐらいで死刑にする訳ないだろ。
ば、馬鹿らしい……」と言い大人しく席に座った。

辞めるんかい!?
アッサリと引き下がったため思わずそうツッコミたくなった。
いやいや。あの勢いは、どうしたのよ!?
ロンの態度にも驚くが、あの男の身を引き方にも
余計に驚いてしまった。

するとロンは、ハァッ……とため息を吐いた。
ワインをテーブルに置くと服の上着から
新しいテーブルナプキンを取り出した。
そして陛下の下に落ちたナプキンと交換していた。
よく見るとグチャグチャになっているではないか。

「まったく。出来ない事を口に出してはいけませんよ?
それにユリア様に酷い事を言いながら
ナプキンをイジイジと弄らないで下さいね。
緊張しているのがバレバレですから」

「う、うるさい……違う。ただ触っていただけだ!」

えっ……?ナプキンを弄っていた?
まさかと思ったが、確かに弄ってグチャグチャだ。
それに出来ない事に対しては否定しないんだ?

あの男を見ると頬を赤く染めて必死に
ロンに言い訳を繰り返していた。
あの極悪非道のオーラも残忍だと言われている噂の
微塵も感じられなかった。

これが……エレンの言っていたツンデレ?
まさかと思っていたが、どうも言っている発言と
行動がさっきから噛み合っていない。

私は、ポカーンとしているとロンは、陛下の言葉を
無視してグラスを持ってこちらに来た。
えっ……?

「陛下が大変失礼しました。赤ワインです。
ユリア様が席に着いて下さって良かったです。
あれは、照れ隠しなのでお気になさらずに」

「はぁ……あ、私未成年だからお酒飲めないの。
ごめんなさい」

「ロン。余計な事を言うな!!
それよりメシにしろ。次のを持ってこい」

ロンが代わりに謝ってきた。しかし
あの男が横から割り込むように口を挟んでくる。
ロンは、やれやれと言った表情で苦笑いをすると
頭を下げて行ってしまった。

その後は、さっきと違い黙々と食べるあの男。
心なしか食欲も普通に戻っていた。
後でエレンが私が来たから戻ったのだろうと言っていたが……。