するとエレンが、部屋に入ってきた。
見ると手には、フルーツをどっさりとカゴに入れて持っていた。
「エレン。それは?」
「こちらは、陛下のプレゼントでございます。
最近食欲がないユリア様にとご用意したみたいですよ。
酸味のモノもあるので、つわりのユリア様には、
ピッタリだと思いますわ」
「陛下が……!?」
わざわざつわりの酷い私のために用意をしてくれたの?
どんな気持ちで用意したのかしら?
きっとウキウキしながら選んだのかしら
そう考えると胸が熱くなった。嬉しい……。
自分で持ってこないところが、あの男らしい。
するとエレンは、1枚の手紙を差し出してきた。
これは……?と不思議そうに見てみると
「陛下からの手紙を預かってきました」と言ってきた。
あの男から……?
最近交換みたいな手紙のやり取りはしなくなったが
久しぶりに貰えるなんて。
私は、その手紙を受け取ると読んでみる。
今は、自分で読み書き出来るまでにはなっていた。
『愛しの妻・ユリアへ。つわりが酷いそうなので
酸味のあるフルーツをお送りします。
大切な時期なので無理はしないでほしい。
僕も新しい家族の誕生を心から待ち望んでいます。
あなたの夫・アディより』と書かれてあった。
フフッ……言葉では上手く表現が出来ないから
わざわざ手紙で書いてきたのね。
手紙だと自分の気持ちを素直に伝えられるから
相変わらず不器用ね……。
クスクスと笑いながら大切に封筒にしまう。
実は、今まで貰った手紙は全部持っている。
あの男が一生懸命考えた手紙だからか、どうしても
捨てることが出来なかったからだ。
テーブルに置くとお腹を優しく撫でた。
「良かったわね……パパは、あなたが産まれてくるのを
待ち望んでいるらしいわよ」
お腹の子にそう言って話しかけた。
産まれたら、どうやって反応をするのかしらね?
きっとまた……発言と表情が噛み合ってないわね。
そう思ったら、その日が楽しみになっていた。
だが、その楽しみの他にも、さらに驚くことがあった。
それは、お腹が6ヶ月目になる頃だった。
年も変わり寒い冬の季節。外は、雪が積もっていた。