よくこんな重い物を持てたわね。
私は、必死になりながら花瓶をずらす。
隠し扉になってあり蓋を開けるとボタンがある。
そのボタンを押してみるとガッシャンと音がした。
すると備え付けの本棚が横に動き出した。
本棚が動くと地下に続く階段が見えた。
よし。これでいいわ。

私は、中に入ろうとするが、あっ!と気づいた。
そうだ。元に戻さないと……。
入る際は、元の位置に戻して誰にも
見られないようにするように言われていたのだったわ。

慌てて元に戻すと中に入り内側にあるレバーを引いた。
すると本棚が元に戻って行く。
完全に閉まるのを確認するとランタン頼りに
私は、階段を下りて行くことにした。

ドアが見えてきた。私は、急いで下りると開けた。
そうしたら……やっぱりそこにあの男が居た。
あの男は、ソファーの上で体育座りをしながら
お風呂の時と同じように泣いていた。

そして私に気づくと慌てて立ち上がり
恥ずかしかったのか背中を向いてしまった。

「もう……どうして勝手に、こっちに来たのよ?
何処に行ったかと思って心配したじゃない」

見つかったから良かったが、下手したら
宮殿中が大騒ぎになるところだった。
ショックが大き過ぎて1人になりたかったのかしら?

あの男は、何も話そうとしない。
手は、ギュッと握り締めてガタガタと震えていた。
泣くのを我慢しているのかもしれない。
私は、心配になり近づこうとしたその時だった。

「ここにずっと居れば……ユリアが心配して
帰るのを辞めるかと思ったんだ」

「えっ……ど、どういうこと?」

私は、驚いて聞き返した。するとあの男は、
チラッと私の方を向いた。目には、涙を溜めており
ウルウルした表情になっていた。

「俺が居なかったら騒ぎになる。見つかっても
ここから出ていかない。そうしたら……困るだろ?
そうなれば……帰らないと思ったんだ」

じゃあ……わざと!?
私は、彼の言葉を聞いて驚いた。

「やっていることは、ガキみたいだろ?
笑いたかったら笑えばいい。
俺は、それしか出来ない。初めてなんだ。
こんな想いしたの。だから自分でもどうしたらいいか
分からない……情けない限りだ」