悩んでいると時の神という黒猫は、ため息を吐くと
私の方を見てきた。
『仕方がない。君に猶予をあげよう。
明日の夜、この時間にもう一度おいで
その時までにどちらを選択するか聞かせてほしい。
元の世界に戻るか、このまま転生した姿で居るか』
黒猫は、そう言うと噴水の中に飛び込んだ。
あっ……!!
慌てて噴水のところに駆け寄ると光りも消えて
何もない噴水になっていた。
本当に……時の神なんだ……!?
唖然とするが、ようやく自分が何故
異世界に転生してしまったのか理由を聞くことが出来た。
まさか誤って魂が入れ替わっていたなんて。
驚くが納得する部分が多かった。
ようやく家に帰れる。だけど……。
私は、チラッとあの男が居る方向に振り向いた。
まだ悲しそうに涙を流していた。
どうやって話そう……。
気まずい雰囲気にどう接したらいいか悩んだ。
「隠していて……ごめんなさい。
私……異世界の人間なの。ここの世界の人間じゃないわ」
「……聞いていた性格とは違うとは、前から思っていた。
だが……それよりも妻として居てくれただけでも
良かったと思っていた……なのに」
拳をギュッと強く握り締めていた。
ショックを受けているのかもしれない。いや。
それ以上に傷つけた……。
「陛下……」
するとあの男は、パッと背中を向けて
小走りで宮殿の中に入ってしまった。
私は、慌てて呼び止めるが無視されてしまった。
怒ってしまったのだろうか?
だって仕方がないじゃない……。
私とあなたとは、住む世界が違うの。
向こうには、両親が居るし友達も居る。
来た時は、いきなり嫁ぐことになったり
あの男のややこしいツンデレな性格に腹を立てたり
意外なギャップに戸惑わされたりもした。
バタバタしていたせいか、あまり家族が居なくて
寂しいとか、恋しいとか思う暇もなかったわ。
この世界に居るのが当たり前のようになっていた。
でも……このチャンスを逃したら二度と
私は、元の世界には帰られなくなる。そう考えたら
迷ってしまった。自分の気持ちに……。
自分の立場よりも……。
私が涙を拭きながら城の中に戻った。
明日のこの時間までには答えないといけない。
どうしたらいいの……私。
それにあの男ともちゃんと話し合わないと