意外と黒猫が喋ることも不思議な現象も
素直に受け取るあの男。
本当の持ち主の魂……確かに気になる。
私がこの身体を使っているのなら、その彼女の魂は、
何処に行ってしまったのだろうか?

『この身体の持ち主は、彼女のもう1つの身体に
転生しているよ!
最初は、君と同じで戸惑っていたようだけど
今は、三浦って男の子の力を借りて上手くやっている』

み、三浦君と!?
それは、驚く真実を告げられた。
私がトラックに飛び込んだ時にそばに居たけど
まさか魂を入れ違えたもう1人の彼女に
力を貸してくれていたなんて……。

あ、なら。私の身体は無事だったんだ?
良かった……死んだ訳ではなかったみたいだ。
だが、それにピクッと反応するあの男だった。

「ミウラ?じゃあ……お前の言っていたミウラは、
元の世界の男だったわけだ?」

「えっ?まぁ……そうなるわね。片思いだけど」

「だったらなおさら帰す訳にはいかない!!
元から帰す気もないが……なおさらだ。
ユリアは、俺の妻でこの国の皇后だ!
これならもずっと……だから」

必死に帰したくないと訴えてくる。
彼の気持ちを考えると胸が痛くなってきた。
元の世界には帰りたい。でも……そうなると
この世界とはお別れになってしまうからだ。

「でも……私元々ここの世界の人間じゃないし」

「同じ世界じゃないとここに住んだらいけないのか?
そんなの認めない。俺は、この世界の人間だが皇帝だ。
お前の望みなら何でも叶えられる。何も不自由させない。
だから……俺のそばに……居てくれ」

彼は、初めて本音でぶつけてきた。
涙をいっぱいに溜めて。
泣きながら必死に気持ちを伝えてくるあの男を見て
私まで泣きそうになった。

悲しさよりも嬉しさだ。
あの男は、なかなか本心を見せようとしない。
変な意地を張りツンデレで。意地悪なことばかり言う。
でも気持ちの優しい人だ。純粋で寂しがり屋で
泣き虫なところもある……放っておけない人。

だから余計に戸惑ってしまった。帰るかどうか……。
元の世界には帰りたい。でも彼を見捨てられない。
本当に……私は、どうしたらいいの?