噴水の前に行くと噴水が月の光を浴びて
キラキラと黄金の輝きを放っていた。
普通の光ではない……。神秘的な輝きだ。
するとピョンと黒猫が出てきた。

あ、間違いない。あの時の黒猫だわ!!
私がトラックに引かれそうになった時に助けた猫。
その黒猫の目は、黄色く変わる。

『あの時は、助けてくれてありがとう。
僕は、時の神。帰宅に急いでいた時にトラックに
引かれそうなっているところを君に助けられたんだ!
まぁ……僕死なないけどね。
でも助けてくれたお礼に時間を戻してあげようとしたら
君ともう1人の皇女と同じ名前だから誤って
魂を入れ間違えたみたいだ』

『急には、戻せない。だからタイミングを
見計らっていたけど……今日は、満月。
君は、戴冠式を迎えて丁度いいと判断した。
今なら君を元の世界に帰してあげよう』

黒猫の言葉に驚いた。時の……神様?
この黒猫が?でも確かに神秘的な力を感じる。
じゃあ……私は、元の世界に戻れるの?
本当の両親や友達……三浦君が居る世界に。

心臓がドクンッと大きく高鳴る。
元の世界に……。
するとその時だった。

「ま、待て。これは、どういうことなんだ!?」

あの男が慌てて声を荒げた。
あ、見られた……!?
黒猫を見られたこともだが、今の話を聞かれていたら
私が異世界から来たことがバレてしまう。

「へ、陛下……」

「どういうことなのか説明しろ!?
これは何だ?元の世界とか……魂を入れ違えたとか
どういう意味なんだ?」

「それは……」

私は、戸惑ってしまう。
何から話したらいいのだろうか。
見られた以上黙っておく訳にもいかないし
それに……元の生活に戻るとなるとここの私は、
どうなるのだろうか?
すると黒猫がクスッと笑ってきた。

『僕から説明しよう。僕は、時の神。
そして彼女は、ここの世界の人間じゃない。
彼女の本当の名は、櫻井百合愛。
今の身体と彼女の身体が入れ違えて魂が入ってしまった。
だから彼女の魂を元の身体に戻そうと思う』

「猫が……喋った!?いや……この際どうでもいい。
それが本当なら彼女は、別人ってことになる。
なら、本当の持ち主の魂は、どうしたんだ?」