ゼトリックにそう文句を言いながら
私を引き寄せるあの男だった。
もう……相変わらず言葉と行動が合っていないのだから
呆れながらも嬉しくなってしまうのは、
この男を心の底から好きだからだろう。

ゼトリックも彼のことをよく理解している。
それを見てクスクスと笑っていた。
私も恥ずかしくなるが、悪い気はしなかった。

するとエレンとアミーナが呼びに来た。
戴冠式の準備が整ったらしい。
私とあの男は、そちらに向かうことにする。

皇后戴冠式。聖職者から受け取ると
皇帝陛下の手から王冠を頭に被せてもらう。
そして民達にお披露目をする式典だ! 

式場まで歩くのだが、その際に新調した豪華なドレスに
絹の長い法衣を羽織り、王杖を持つ。
隣には、皇帝であるあの男が一緒に歩いてくれる。
緊張しながら立つと街の人達が花びらを投げて
お祝いをしてくれた。

「皇帝陛下。万歳!!」

「皇后陛下万歳!!」

重たい法衣は、侍女達が数人で持ってくれた。
少しずつ確かに重みを噛み締めながら歩いた。
あの男も緊張しているのかキリッとした表情になっていた。

式場まで来ると聖職者が王冠をあの男に渡した。
そして私の方を向く。いよいよか……。
私は、少し頭を下げると王冠を被せてくれた。
するとさらに歓声や拍手が盛大に上がった。

ここまでは順調に行くが問題は、そこからだ!
お披露目をするのは、あの男なのだが
ちゃんと言えるだろうか?
誓いの言葉を言わないといけないのだが、照れて
変なことを言わないか心配になる。
するとあの男は、皆の方を向くと告げた。

「今日からこの者の姓をエミリオンとし皇后にする。
健やかな時も病の時も妻として一生あ……あ……」

あぁ……やっぱり緊張して言えてない。
頑張れ。愛すると言うのよ!愛するって……。

周りもヒヤヒヤしながら見ていた。
こういう時にあの男は、緊張してしまい
正反対のことを言い出すから周りも気が気ではない。

「……あ……あ……愛する訳ないだろ!!」