実は、密かに恋愛ノベルを愛読していた。私もあんな素敵な恋愛をしたい。
 そんな風に思いながら読む時間が好きだった。だが、それを周りに言うとお前がか?と言われるので
私だけの秘密。

 傘を差しながら2人で歩く。雨は、うっとうしいが並んで歩けるのなら
 たまには、いいかもしれない。
細道を通ると大通りになる。そして歩道を歩いていると黒猫が私達を追い越してきた。あ、黒猫!? しかも何やら急いでいるのか走っていた。

 横断歩道で信号が赤になりかけていた。だが黒猫は、構わずに横断歩道を渡ろうとした。すると一台の車が黒猫に気づかずに進む。あ、危ない!!

「櫻井!?」

 三浦君が名前を呼ぶ前に私は、走り出していた。体力勝負や足の速さなら自信があった。
 何より正義感だろうか……助けなくちゃあ!!
 そんな事を思ったら頭より身体が動いていた。私は、必死に走り滑り込むように黒猫を抱きかかえた。車まであと数センチ……引かれる!!

 目をつぶる。だがしかし、その瞬間スローモーションになったような感覚がした。何処からか声が聞こえてくる。

『助けてくれてありがとう……お礼に僕も君を助けてあげる』

 えっ……? するとブワッと眩しい光が私を包んだ。
 キャアッッ……眩しい!! 目が潰れるかと思うぐらいの光だった。

 そして光が落ち着いたので目をうっすらと開けた。すると……どういうことだろうか?
 知らない外国人のおじさんとおばさんが居た。
 涙目になりながら私を覗き込んでいた。しかも何かの劇団かと思うような姿で……。

「ユリア。良かった目を覚ましたのね」

「気絶して3日も眠り込んでいたんだよ。やはり気絶するぐらいショックだったんだね。可哀想なユリア。許しておくれ」

 えっ……何が? 知らない人に心配されているし
しかも3日も眠り込んでいたの……私?

 ゆっくりと身体を起こした。あれ?ここは……何処?
 周りを見てみると知らない部屋だった。
広くて洋風の部屋にピンクと白で可愛らしいインテリアだ。しかもメイドみたいな格好をしている女性も数人居るし……。

「あの……ここは、何処なんですか?」