新しい関係を築く為に、父がしたこともないはずの料理をしてくれている。
それがわかるからこそ、紗雪は心がとても穏やかになっていくのを感じた。
「お父さん、仕事は?」
「仕事はこれから行く。少し遅くなるって伝えてあるから問題ない」
「そう」
トーストにバターを塗りつつ、紗雪はテレビへと視線を移した。丁度、スポーツコーナーが終わり、特集のコーナーへと進んでいく。画面がライブ映像へと変わり、中継先にいた女性キャスターがにこやかにしゃべり出す。
『近距離で超新星爆発が起こったと言われている一〇五四年以来、およそ千年ぶりに超近距離で起こったベテルギウスの超新星爆発。超新星爆発は大質量の恒星が、その一生を終える時に起こす、大規模な爆発現象のことを指すと言われており、爆発後はとてつもない明るさで暫くの間、輝き続けます。爆発が起こって二日目の朝を迎えますが、依然上空には太陽が二つあるかのように輝きを放っています』
テレビカメラが空にある太陽を映す。そこには太陽とは別に、もう一つ光り輝くものが映し出されている。先程、紗雪が部屋から見た光景と同じ絵面だった。
「紗雪は身体に異常はないか?」
「うん……大丈夫」
父がマグカップを持って、紗雪の正面へと腰を下ろす。父の眼差しに、紗雪は咄嗟に視線をそらした。初めての出来事に、身体が勝手に動いてしまう。
父の顔を素直に見れなかった紗雪は、無意識にトーストにかじりついた。サクッと良い音と共に、口内には溶けたバターの味が広がる。
「そうか。もし辛かったら――」
「本当に大丈夫だから」
紗雪は父の言葉を途中で遮ると、残りのトーストを一気に口に入れ、マグカップへと口をつけた。カモミールティー独特の林檎の香りが鼻を抜け、ほんのりとした甘さが紗雪の心を落ち着かせる。
父がこんなにも気にかけてくれることが、紗雪はとても嬉しかった。こうして素直に父へと顔を向けられないのも、今まで父との距離感が分からずに生きてきたから。今まで父に対して憎しみの感情しか抱いてこなかった紗雪にとって、父の言葉はとてつもない愛を感じた。
テレビではスタジオに映像が切り替わり、専門家の人が話を続けている。
それがわかるからこそ、紗雪は心がとても穏やかになっていくのを感じた。
「お父さん、仕事は?」
「仕事はこれから行く。少し遅くなるって伝えてあるから問題ない」
「そう」
トーストにバターを塗りつつ、紗雪はテレビへと視線を移した。丁度、スポーツコーナーが終わり、特集のコーナーへと進んでいく。画面がライブ映像へと変わり、中継先にいた女性キャスターがにこやかにしゃべり出す。
『近距離で超新星爆発が起こったと言われている一〇五四年以来、およそ千年ぶりに超近距離で起こったベテルギウスの超新星爆発。超新星爆発は大質量の恒星が、その一生を終える時に起こす、大規模な爆発現象のことを指すと言われており、爆発後はとてつもない明るさで暫くの間、輝き続けます。爆発が起こって二日目の朝を迎えますが、依然上空には太陽が二つあるかのように輝きを放っています』
テレビカメラが空にある太陽を映す。そこには太陽とは別に、もう一つ光り輝くものが映し出されている。先程、紗雪が部屋から見た光景と同じ絵面だった。
「紗雪は身体に異常はないか?」
「うん……大丈夫」
父がマグカップを持って、紗雪の正面へと腰を下ろす。父の眼差しに、紗雪は咄嗟に視線をそらした。初めての出来事に、身体が勝手に動いてしまう。
父の顔を素直に見れなかった紗雪は、無意識にトーストにかじりついた。サクッと良い音と共に、口内には溶けたバターの味が広がる。
「そうか。もし辛かったら――」
「本当に大丈夫だから」
紗雪は父の言葉を途中で遮ると、残りのトーストを一気に口に入れ、マグカップへと口をつけた。カモミールティー独特の林檎の香りが鼻を抜け、ほんのりとした甘さが紗雪の心を落ち着かせる。
父がこんなにも気にかけてくれることが、紗雪はとても嬉しかった。こうして素直に父へと顔を向けられないのも、今まで父との距離感が分からずに生きてきたから。今まで父に対して憎しみの感情しか抱いてこなかった紗雪にとって、父の言葉はとてつもない愛を感じた。
テレビではスタジオに映像が切り替わり、専門家の人が話を続けている。