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 メッセージを送った紗雪は、スマホを枕元に置いて布団をかぶった。視界が奪われ黒一色の世界に入り込む。太一に送ったメッセージが、何度も頭の中で反芻していた。
 今日で最後。本当に今日で終わりにする。
 母もこんな気持ちで最後の日を迎えたのかもしれない。生きている価値のない人間は、いなくなった後に初めて価値を見出す。
 母がそうだったように。紗雪にその価値を教えてくれたように。
 全てを失った紗雪が取れる選択肢は、もはや一つしか残っていなかった。
 夜の学校で考えて決断したことを太一に伝える。
 本当は何も言わずに行動するべきなのかもしれない。でも紗雪にはそれができなかった。
 太一には伝えたい。具体的な理由なんてない。それでも全て知ってもらいたいと強く思う自分がいた。
 そんな自分本位な考えに嫌気が差す。
 でも、これが最後。最後くらい、わがままを言ってもいいのではないか。
 目をつぶった紗雪は、最後の仕事をするための準備に入った。