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 スマホから流れていた音声が終わり、教室内が静寂に包まれる。夏月はスマホを手に取ると、紗雪に視線を向けた。
「これが真実。太一はゼロ型じゃない。紗雪ちゃんがゼロ型なの」
 夏月の言葉に太一は開いた口が塞がらなかった。周囲のクラスメイトも、太一と同様の反応をみせている。
 教室内が再び静寂に包まれる。紗雪がゼロ型だということが、皆信じられないみたいだ。
「やっぱりね。私はずっと怪しいと思ってた」
 静寂を破ったのは有香だった。人集りをかきわけ、太一達の前に現れる。
「だいたい紗雪って、皆とは違ってる部分が多すぎでしょ。いつも一人でいること多いし、紗雪の方から話しかけられたこともないし。ゼロ型って異性との繋がりがないって言われているけど、紗雪の場合は同性にも当てはまるんだよね。どうしてこの学校にいるのか、本当に不思議で仕方がない。私達を馬鹿にしてるってずっと思ってた」
「そーよ。紗雪の態度って、前から許せない部分がたくさんあった」
「私達を馬鹿にして、高見の見物してるんじゃないよ」
 有香の取り巻きである成瀬と宮井が乗っかるように声を発する。教室内が紗雪についての不満で溢れかえる。
「それは違うよ」
 有香の発言に首を突っ込んだのは夏月だった。
「夏月は紗雪を庇うんだ」
「庇うとかじゃない。私、紗雪ちゃんがこの学校に来た理由を知ってる。紗雪ちゃんがこの学校に来たのは――」
「やめて!」