夏月はボンドについて、ある程度の知識を持っていると自負している。皆が言うように、父はボンドを見つけて世間に広めた張本人。色々と父からボンドについての話をされたことがあった。
でも夏月自身、そこまでボンドに興味がなかった。だからボンドについての情報はうろ覚えで、幻のボンドとも言われているゼロ型の知識など、持っていないに等しかった。
どうして太一がゼロ型なのか。そもそもゼロ型は本当に存在するのか。
夏月は初めて自分から、ボンドについての質問を父にしようと決心した。
「ただいま」
決意した日に絶好の機会が訪れた。夏月の父である星野誠司が家に帰ってきたのだ。久しぶりに聞く父の声に、夏月は懐かしさを覚える。
「おかえり」
父が手をあげるの見た夏月は自分も手をあげて、互いの手のひらを打ち合わせた。パチンと良い音が玄関に響き渡る。星野家ではいつも家族を迎えるとき、こうしてハイタッチを交わしていた。父が言うには、家族の距離が縮まるからハイタッチをするらしい。夏月には未だにその意味がよくわかっていなかった。
「お父さんが今日帰ってくるなんて思わなかった」
「ちょっと色々あって。今日はお客様も来てるんだ」
そう告げた父の後ろに、スーツ姿の男性が立っていた。
「初めまして。夏月ちゃんだよね? 森川雅樹です」
父と同じ年頃の男性に頭を下げられ、夏月も頭を下げた。
「夏月は知らないかもしれないけど、森川先生には今年から血液検査の担当をしてもらってるんだ」
「そうなんだ」
父の発言に、夏月は冷静に応える。冷静になれたのも、父の告げた名前をどこかで見た覚えがあったからだ。少し考えた夏月は直ぐに思い出す。ポータルサイトの血液検査の結果が表示される画面の下の方に、森川病院という名前が記載されていたことを。
「あと夏月の同級生に紗雪ちゃんって子がいるだろ。実は森川先生のお子さんなんだ」
「えっ!」
予想もしてなかった事実に、夏月は驚きを隠すことができなかった。
紗雪の父親が目の前にいる。紗雪について聞くチャンスだと思った。
「それより、母さんはいるか?」
「お母さんは今いないよ。最近始めたフラダンス教室に行ってる」
「母さん、また習い事始めたのか」
「うん。この間まで料理教室の習い事に行ってたけど、一通りの課程が終わったから辞めたんだって」
「そうか。まあ、色々と苦労かけてるからな」
でも夏月自身、そこまでボンドに興味がなかった。だからボンドについての情報はうろ覚えで、幻のボンドとも言われているゼロ型の知識など、持っていないに等しかった。
どうして太一がゼロ型なのか。そもそもゼロ型は本当に存在するのか。
夏月は初めて自分から、ボンドについての質問を父にしようと決心した。
「ただいま」
決意した日に絶好の機会が訪れた。夏月の父である星野誠司が家に帰ってきたのだ。久しぶりに聞く父の声に、夏月は懐かしさを覚える。
「おかえり」
父が手をあげるの見た夏月は自分も手をあげて、互いの手のひらを打ち合わせた。パチンと良い音が玄関に響き渡る。星野家ではいつも家族を迎えるとき、こうしてハイタッチを交わしていた。父が言うには、家族の距離が縮まるからハイタッチをするらしい。夏月には未だにその意味がよくわかっていなかった。
「お父さんが今日帰ってくるなんて思わなかった」
「ちょっと色々あって。今日はお客様も来てるんだ」
そう告げた父の後ろに、スーツ姿の男性が立っていた。
「初めまして。夏月ちゃんだよね? 森川雅樹です」
父と同じ年頃の男性に頭を下げられ、夏月も頭を下げた。
「夏月は知らないかもしれないけど、森川先生には今年から血液検査の担当をしてもらってるんだ」
「そうなんだ」
父の発言に、夏月は冷静に応える。冷静になれたのも、父の告げた名前をどこかで見た覚えがあったからだ。少し考えた夏月は直ぐに思い出す。ポータルサイトの血液検査の結果が表示される画面の下の方に、森川病院という名前が記載されていたことを。
「あと夏月の同級生に紗雪ちゃんって子がいるだろ。実は森川先生のお子さんなんだ」
「えっ!」
予想もしてなかった事実に、夏月は驚きを隠すことができなかった。
紗雪の父親が目の前にいる。紗雪について聞くチャンスだと思った。
「それより、母さんはいるか?」
「お母さんは今いないよ。最近始めたフラダンス教室に行ってる」
「母さん、また習い事始めたのか」
「うん。この間まで料理教室の習い事に行ってたけど、一通りの課程が終わったから辞めたんだって」
「そうか。まあ、色々と苦労かけてるからな」