「せ、先生。どうしてここに……」
「どうしてって、森川に連れてきてもらったんだ。今朝言っただろ? 話があるって」
「そりゃ、そうですけど……」
なんとも煮え切らない様子の太一を横目に、紗雪は抱えていたバッグを机に置くと、椅子に腰を下ろした。
「森川。連れてきてくれてありがとう」
「私は頼まれたことをしたまでです。そもそも、この教室は私しか入ることができないんですから」
紗雪の発言に太一は突っ込まずにはいられなかった。
「ちょっと聞きたいんだけど……」
「何かしら?」
「この教室って空き教室だよな? どうして森川が鍵を持ってるんだ」
太一の疑問に答えたのは高野先生だった。
「それは森川専用の教室だからだ」
「さっきも聞きました。どうして森川専用の教室があるんですか?」
太一は高野先生に詰め寄る。高野先生は息を吐くと、太一にはっきりと言った。
「森川が成績優秀者だからだ」
高野先生の言葉に太一は思わず唾を飲み込んだ。高野先生は続ける。
「森川は入学当初からずっと一番の成績を修めている。それは月岡も知っているだろ?」
「そうですね」
紗雪は成績優秀者が担う新入生代表の挨拶を任されていた。それに加え、今まで行われた全ての定期試験で学年一位の座に就いている。
「我が堀風高校は決して偏差値が高い高校ではない。それなのに森川は全国模試でも上から十番に入るほどの成績優秀者。学校始まって以来の天才とも言われてる。それくらい堀風高校にとって、森川は特別な存在なんだ」
「特別……」
太一はその言葉を聞いて身震いした。太一自身、紗雪とは違う意味での特別な存在になってしまったからなのかもしれない。
「そんな成績優秀者である森川が一年生の夏休みに、とある相談をしてきた」
「相談ですか?」
「ああ。静かに勉強ができる空間が欲しいと。学校側も全国模試でさらに順位が上がれば、学校名を全国に知らせることができる。良い宣伝になるとでも思ったのだろう。あっさりと森川の提案を受け入れ、この教室を与えたってわけだ」
太一は紗雪に視線を移す。紗雪はバッグから三段重箱を取り出しており、重箱の一段目にびっしりと敷き詰められた、鮮やかな黄色の玉子焼きを口に運んでいた。
「どうしてって、森川に連れてきてもらったんだ。今朝言っただろ? 話があるって」
「そりゃ、そうですけど……」
なんとも煮え切らない様子の太一を横目に、紗雪は抱えていたバッグを机に置くと、椅子に腰を下ろした。
「森川。連れてきてくれてありがとう」
「私は頼まれたことをしたまでです。そもそも、この教室は私しか入ることができないんですから」
紗雪の発言に太一は突っ込まずにはいられなかった。
「ちょっと聞きたいんだけど……」
「何かしら?」
「この教室って空き教室だよな? どうして森川が鍵を持ってるんだ」
太一の疑問に答えたのは高野先生だった。
「それは森川専用の教室だからだ」
「さっきも聞きました。どうして森川専用の教室があるんですか?」
太一は高野先生に詰め寄る。高野先生は息を吐くと、太一にはっきりと言った。
「森川が成績優秀者だからだ」
高野先生の言葉に太一は思わず唾を飲み込んだ。高野先生は続ける。
「森川は入学当初からずっと一番の成績を修めている。それは月岡も知っているだろ?」
「そうですね」
紗雪は成績優秀者が担う新入生代表の挨拶を任されていた。それに加え、今まで行われた全ての定期試験で学年一位の座に就いている。
「我が堀風高校は決して偏差値が高い高校ではない。それなのに森川は全国模試でも上から十番に入るほどの成績優秀者。学校始まって以来の天才とも言われてる。それくらい堀風高校にとって、森川は特別な存在なんだ」
「特別……」
太一はその言葉を聞いて身震いした。太一自身、紗雪とは違う意味での特別な存在になってしまったからなのかもしれない。
「そんな成績優秀者である森川が一年生の夏休みに、とある相談をしてきた」
「相談ですか?」
「ああ。静かに勉強ができる空間が欲しいと。学校側も全国模試でさらに順位が上がれば、学校名を全国に知らせることができる。良い宣伝になるとでも思ったのだろう。あっさりと森川の提案を受け入れ、この教室を与えたってわけだ」
太一は紗雪に視線を移す。紗雪はバッグから三段重箱を取り出しており、重箱の一段目にびっしりと敷き詰められた、鮮やかな黄色の玉子焼きを口に運んでいた。