とりあえずドアを閉めてゆっくりと自分の机に向かった。静寂に包まれた教室に、上靴の音が響きわたる。机に座る女子も太一の存在に気づいているはずだ。それなのに女子は太一の方に視線をむけず、本に目を通している。
「あの」
声をかけてみる。呼びかけに応えるように女子はゆっくりと顔を上げた。目の前にいたのは同じクラスの森川紗雪だった。
「俺の机で何してるの?」
「何してるって、見ればわかるでしょ。本を読んでるの」
紗雪の返答に太一は頷く。でもそんな当然のことを太一は聞いたのではない。
「どうして俺の机に座って本を読む必要があるんだよ」
「自分の机に座ってる女子がいたら、男子は声をかけたくなると思ったから。だからあなたの机に座った。本を読んでたのは、待っている間の退屈しのぎ」
質問に漏れなく答えた紗雪に、太一は言葉に詰まった。流石、定期試験で学年トップは当たり前、全国模試でも上から十番以内に入るほどの頭脳の持ち主だ。それに加えて、柊と並んで学年トップクラスの美少女と言われている。才色兼備とはまさに紗雪のためにある言葉なのかもしれないと太一は思う。
「待っていたのは、あなたに伝えたいことがあったから」
「伝えたいこと?」
太一が小首を傾げると、紗雪は持っていた本を閉じた。そして机に本を置くと、自らは腰を浮かし、太一の机から降りる。地面に降り立った紗雪を見て、太一は思わず見惚れてしまった。すらっとした細い脚に、腰まで伸びた艶やかな黒髪がふわりと舞う。微かに香った匂いが、太一の鼻腔をくすぐる。ほんのりと甘くて優しさを感じさせる女子独特の匂い。まるで五感のほとんどを奪われた錯覚に太一は陥る。
紗雪は太一に一歩近づいてから言った。
「私と付き合ってほしいの」
一瞬、何を言われたのかと思った。口をポカンと開けたまま、紗雪の発言を自分なりに消化しようと試みる。それでもあまりにも突然すぎる出来事に、太一は面を食らった。
「つ、付き合うって……」
「……だから、私と付き合ってほしいって言ったのだけど」
「あの」
声をかけてみる。呼びかけに応えるように女子はゆっくりと顔を上げた。目の前にいたのは同じクラスの森川紗雪だった。
「俺の机で何してるの?」
「何してるって、見ればわかるでしょ。本を読んでるの」
紗雪の返答に太一は頷く。でもそんな当然のことを太一は聞いたのではない。
「どうして俺の机に座って本を読む必要があるんだよ」
「自分の机に座ってる女子がいたら、男子は声をかけたくなると思ったから。だからあなたの机に座った。本を読んでたのは、待っている間の退屈しのぎ」
質問に漏れなく答えた紗雪に、太一は言葉に詰まった。流石、定期試験で学年トップは当たり前、全国模試でも上から十番以内に入るほどの頭脳の持ち主だ。それに加えて、柊と並んで学年トップクラスの美少女と言われている。才色兼備とはまさに紗雪のためにある言葉なのかもしれないと太一は思う。
「待っていたのは、あなたに伝えたいことがあったから」
「伝えたいこと?」
太一が小首を傾げると、紗雪は持っていた本を閉じた。そして机に本を置くと、自らは腰を浮かし、太一の机から降りる。地面に降り立った紗雪を見て、太一は思わず見惚れてしまった。すらっとした細い脚に、腰まで伸びた艶やかな黒髪がふわりと舞う。微かに香った匂いが、太一の鼻腔をくすぐる。ほんのりと甘くて優しさを感じさせる女子独特の匂い。まるで五感のほとんどを奪われた錯覚に太一は陥る。
紗雪は太一に一歩近づいてから言った。
「私と付き合ってほしいの」
一瞬、何を言われたのかと思った。口をポカンと開けたまま、紗雪の発言を自分なりに消化しようと試みる。それでもあまりにも突然すぎる出来事に、太一は面を食らった。
「つ、付き合うって……」
「……だから、私と付き合ってほしいって言ったのだけど」