紗雪へ

 紗雪のことを思うと、どうしてこんなことをしてしまったのか。今でも自分の犯した過ちを後悔しない日はないです。
どうしてあの時あんなことをしてしまったのか。
どうして紗雪を一人にしてしまったのか。
本当に言葉で言い表せないくらい、後悔の念に苛まれています。
 でも、一度犯してしまったことは変わらない。紗雪を一人にしてしまった事実は、絶対に消えない。
 だからお母さんはその罪を背負って、生きていかないといけない。こうして今、刑務所にいるのも罪を償うため。
 わかっているつもりです。
でも、紗雪が何度も私に会いにきてくれる度に、募る思いがありました。
子供に心配をかける親なんて、死んだ方がましだと。
 紗雪は頭の良い子だから、逃げているだけだと思うかもしれません。その通り、実際にお母さんは逃げているんだと思います。
 でも今のお母さんにはもう何もしてあげられないし、生きていると紗雪を悲しませるだけでしかない。
 だから死ぬことは、今の私ができる精一杯の償い。本当にごめんなさい。
 もしこんな駄目なお母さんでも、紗雪に何か残せるのなら。その思いだけを頼りに、これから紗雪に全てを伝えたいと思います。
 紗雪は小さかったから、知らないことばかりかもしれない。
それとも雅樹さんから聞いているのかな。
 既に聞いていたとしても、お母さんの言葉でこのノートに記します。
直接会って言うことができないお母さんを、どうか許してください。

 紗雪が小学生になり、家に一人でいる日々を過ごしていると、ふと寂しさを感じる時があって。だから気を紛らわせるために、雅樹さんに働きたいって言いました。雅樹さんのことを考えれば、言わないほうが良かったのかもしれない。それでも紗雪が味方をしてくれて働けることになった。あの時は嬉しかった。本当にありがとう、紗雪。