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真っ暗な空に、突然見たことのない光が灯った。頭を下げて顎を引くと、紗雪の顔が太一の瞳に映る。紗雪は口を動かしているけど、その声は聞こえない。
僅か一秒弱だったと思う。その瞬間の出来事が、何度も脳内で再生されている。それくらい自分にとっては衝撃的な出来事だったんだと思う。
人が死ぬときは、今までの思い出が走馬灯のように流れると聞いていた。
でも、そんなのは嘘だった。こうして死ぬ直前の光景が何度も再生されるのを、太一は初めて知った。
人が死ぬと天国か地獄に行くと聞いたことがある。でも、今の自分はどちらにもいないんだと思う。おそらくこの無限再生される光景が終わった瞬間に、どちらに行くのか決まるのかもしれない。
もう少し、もう少しだけこの光景を楽しみたい。そう願いつつ、そっと耳をすましてみる。一切の音が遮断された世界。耳を澄ましても、当然何も聞こえてこないと太一は思っていた。
しかし、徐々にカラカラとした雑音が太一の耳へと入ってくる。
いったい何の音なのだろうか。その音の正体を掴めずにいる太一の視界に、再度死ぬ直前の光景が流れ始める。
目の前に広がる光景に合わせるように、カラカラという音が一つずつ意味のある音へと変わっていく。そして目の前に紗雪の姿が映り、ゆっくりと口が動いた。
――太一、生きて。
瞬間、世界が暗転する。光を失い、太一の視界が闇に包まれる。一面に広がる漆黒の海に、太一は自らの運命を悟る。もしかしたら、地獄に行くことになったのかもしれない。太一はそんな自分の運命を受け入れるように目をつぶった。
次に目を開けたら、地獄の世界が広がっているはず。その前に、少しだけ思い出に浸ろうと太一は思った。心中に紗雪の顔が浮かんでくる。
あの時、屋上で紗雪は学校に行くことを約束してくれた。本当に嬉しかった。あんなに苦しい思いをしてきた紗雪が、一歩前に踏み出してくれたのだ。そんな紗雪のことを知れば、誰だって助けたいと思ってくれるはずだ。それに自分がいなくても、後のことは手塚に任せてある。ああ見えて手塚は本当にいい奴だから。そのためにメッセージを送っておいて、本当に良かった。
もっと沢山振り返りたいことが太一にはあった。でも、もう振り返る時間がないことを目の前に見えている光景が伝えてくる。
真っ暗な空に、突然見たことのない光が灯った。頭を下げて顎を引くと、紗雪の顔が太一の瞳に映る。紗雪は口を動かしているけど、その声は聞こえない。
僅か一秒弱だったと思う。その瞬間の出来事が、何度も脳内で再生されている。それくらい自分にとっては衝撃的な出来事だったんだと思う。
人が死ぬときは、今までの思い出が走馬灯のように流れると聞いていた。
でも、そんなのは嘘だった。こうして死ぬ直前の光景が何度も再生されるのを、太一は初めて知った。
人が死ぬと天国か地獄に行くと聞いたことがある。でも、今の自分はどちらにもいないんだと思う。おそらくこの無限再生される光景が終わった瞬間に、どちらに行くのか決まるのかもしれない。
もう少し、もう少しだけこの光景を楽しみたい。そう願いつつ、そっと耳をすましてみる。一切の音が遮断された世界。耳を澄ましても、当然何も聞こえてこないと太一は思っていた。
しかし、徐々にカラカラとした雑音が太一の耳へと入ってくる。
いったい何の音なのだろうか。その音の正体を掴めずにいる太一の視界に、再度死ぬ直前の光景が流れ始める。
目の前に広がる光景に合わせるように、カラカラという音が一つずつ意味のある音へと変わっていく。そして目の前に紗雪の姿が映り、ゆっくりと口が動いた。
――太一、生きて。
瞬間、世界が暗転する。光を失い、太一の視界が闇に包まれる。一面に広がる漆黒の海に、太一は自らの運命を悟る。もしかしたら、地獄に行くことになったのかもしれない。太一はそんな自分の運命を受け入れるように目をつぶった。
次に目を開けたら、地獄の世界が広がっているはず。その前に、少しだけ思い出に浸ろうと太一は思った。心中に紗雪の顔が浮かんでくる。
あの時、屋上で紗雪は学校に行くことを約束してくれた。本当に嬉しかった。あんなに苦しい思いをしてきた紗雪が、一歩前に踏み出してくれたのだ。そんな紗雪のことを知れば、誰だって助けたいと思ってくれるはずだ。それに自分がいなくても、後のことは手塚に任せてある。ああ見えて手塚は本当にいい奴だから。そのためにメッセージを送っておいて、本当に良かった。
もっと沢山振り返りたいことが太一にはあった。でも、もう振り返る時間がないことを目の前に見えている光景が伝えてくる。