超新星爆発が起こってから一週間。太一は未だに目を覚ましていなかった。
 森川先生の話によると、いつ目を覚ましてもおかしくない状態ではあるらしい。でもこうして状態に変化がないのは、太一の中でその時が来ていないからなのかもしれない。
 でもいつか必ずその時はやって来るはず。もしかしたら今日かもしれない。
 そんな淡い期待を抱きながら、夏月は今日も学校帰りに太一の病室を訪れた。個室のドアを開け、太一が眠り続けているベッドへと視線を向ける。
「……今日じゃないか」
 少しだけ高揚していた気持ちを落ち着かせるため、夏月は深呼吸をしてからドアを閉めた。未だに眠り続けている太一のベッドに近づく。白い布団に隠れて見えないけど、太一の左腕には点滴の針が刺さっている。ベッドの横にある点滴スタンドが、太一の現状を物語っていた。
 ベッドの横に丸椅子を持ってきた夏月は、太一の様子を窺いながらゆっくりと腰を下ろした。
「今日も学校であったことを話すね。今日、ちょっとした小テストがあったんだ。今話題になってる超新星爆発についての。ニュースを見てれば解けるって先生は言ってたけど、テレビで放送してなかった部分の出題がいくつかあったみたい。でも私は全問正解したよ」
 他愛のない話を太一にする。事情を知らない人がこの光景を見たら、独り言を言っている変な人と思われるのかもしれない。それでもこうして話しかけることが、太一の目覚めるきっかけになるのなら。変に思われることなんて、夏月にとっては大したことではなかった。
「それと……今日も紗雪ちゃんは一人だった。周りの人……特に有香からの当たりは相変わらず酷くて。ゼロ型が戻ってきたってずっと言われてる。でも、紗雪ちゃんは有香を全く相手にしてないんだよね。それが有香の気持ちを逆なでしてるみたいで。有香ってクラスで権力持ってるから、二人の冷え込んだ関係が教室の空気を悪くしてて。本当、太一が学校を休んでから色々と変わっちゃった」
 特に変わったのは紗雪だった。以前の紗雪はクラスの皆と挨拶を交わすくらいのコミュニケーションはとっていた。しかし太一が休んでからの紗雪は、授業で先生から回答を求められる時以外、一切言葉を発することがなくなった。