そんなことを考えていた矢先、突然窓際が異様に明るくなり始めた。
 始めは何が起こったのか理解できなかった。でも窓の外を見た瞬間、その美しい光景に夏月は目を奪われた。
 満天に散りばめられた星々。その中で異様に青白く光っている星が一つある。小さい頃から星を見るのが好きだった夏月は、有名な星座くらいは覚えていた。それでも、これほど光り輝く星など生まれて一度も見たことがない。
 嫌な予感がした。咄嗟にクマのぬいぐるみを抱える腕に力を入れる。とりあえず何が起きているのか確認するために、夏月は部屋の電気をつけてからテレビの電源を入れた。
 画面が映し出された瞬間、とある文字が夏月の目に入る。
「超新星爆発……」
 でかでかと画面にテロップが表示されている。チャンネルを他の番組に変えても、どの放送局もこの異常な現象について報道していた。
「凄い……太一も見てるのかな」
 もしも太一と二人で一緒に観れたら。
 そんな淡い思いを抱いた夏月の耳に、スマホが震える音が入ってくる。
 咄嗟にスマホを手にした夏月は、画面に表示された名前を見て拍子抜けした。
 電話の相手は父だった。
「もしもし、お父さん。何か用?」
『な、夏月か。もうすぐ家に着くから、今すぐ外に出る準備をしなさい』
 いつも言わないようなことを言う父に、違和感を覚えた。
「外って、もうすぐ日付変わるのに。どうして」
 もしかしたら、この天体ショーをもっと綺麗に見ることができる場所に行くのかもしれない。そんな考えが脳裏をよぎった。だったら太一も一緒に連れていきたい。
 その思いを父に伝えるため、夏月は口を開こうとした。
 でも夏月よりも先に口を開いた父の言葉を聞いた瞬間、血の気が一気に引くのが自分でもわかった。
 太一が意識不明の重体で、森川病院に運ばれたと聞いたから。

 静謐な空間に灯る赤い光に照らされた「手術中」という白い文字が、夏月の不安をより一層募らせた。
 目の前の集中治療室。その奥には夏月にとって大切な人が、今もなお生死を彷徨っている。
「お兄ちゃん……」
 一緒に来た美帆が、声を震わせながら祈るように手を組んで俯いている。夏月の父と母も青ざめた表情をしている。
 たぶん、自分も同じ表情をしているんだと夏月は思った。