二日目。一年の余った教室や二年の出し物に顔を出しては、弄り弄られと、これといって特別なことは何もない、ただ笑顔だけが溢れる一日を過ごした。
 夜、風呂上りに輝典へ大丈夫かとメールを送ると、すぐに《明日もちょっと分からないけれど、マシにはなって来てるよ》と返事があった。どれほど酷いものかと心配していた手前、無事を確認出来ただけでも儲けものだった。

 そして最終三日目、午前中は三人で適当な所を巡って楽しみ、午後からは美希がまた友人と回るからと外れ、汐里と知音二人での屋台巡りだ。
 屋台と言えば、祭りと言えば、ということで購入した一つの大き目サイズの焼きそばを、ベンチに腰掛け二人でつつく。肉を食べた野菜を食べないと言い合いながらも、それはそれで和む、いつも通りの空気感だった。
 食べ終えるとまた、言っていない場所の消化に当たる。

 面白かった、楽しかった、良かった。そんな言葉だけが出て来て、最後の思い出としては申し分ない達成感に包まれていた。

 輝典は、今日も休みだ。

「いやぁ遊んだ遊んだ。思えば、この後に受験を控えてるって言うのに、うちってこんな時期に文化祭やるんだね。ちょっと生徒に辛いかも」

「言えてるね。私は無いから心配ないけど」

 汐里は冗談口調でそう言った。
 すると知音は少し溜めて、すぐに優しい笑みを浮かべた。

「何よ?」

「ううん。良かったなって思って。そのことについて話された時はさ、ただただごめんって謝って、難しい顔してたのに……強がりでも冗談で言えるのって、凄いなって」

「知音…」

「安心した。もし最後までそうだったら、私――しおを見送れないところだった。ほんとに……良かった」

「ありがと、知音。ほんとに」

 震える肩を抱き寄せ、しっかりとその胸に収める。
 すると次第にそれも和らいでゆき、知音も汐里を抱き返した。

「柔らかい。やっぱり大きいね」

「最後のそれが無かったら完璧だったんだけどなぁ」

「半分、分けてよ」

 と揶揄うように懇願する知音を、汐里は無視して抱擁を解いた。