ナオさん宅の木製の門扉に感じるようになった安心感のようなものは、神社に行くと感じるそれに似ている。
不思議な魅力。その正体は、考えればいつかわかるだろうと思っていたが、そうでもないようだ。ナオさんといるときに感じるのは、確かに心地よさや幸福感なのだが、その種はどうも見えてこない。タンポポの花を根ごと抜いても、あの綿毛についた小さな種を確認できないことに似ているかもしれない。すっかり育った植物では、その根を張った種を確認することはできない。
門扉を開けて中へ入ると、縁側にナオさんの姿を認めた。甚平を着ており、白地のそれには、薄い灰色かなにかの細い線が細かく入っているように見える。わたしが「わっ」と声を上げると、彼はこちらを見て、「やあ」と微笑んだ。「今日も暑いね」と同じように続ける。
「今日もいきなりすみません」と、わたしは頭を下げる。ナオさんは「僕も退屈だったから」と言うと、「こっちは少し涼しいよ」と手招く。隣に座ると、彼は水滴に濡れた、無色の液体が入った冷茶グラスに手を付け、「なに飲む?」と問うた。麻の葉柄の布に縁取られた藺草のコースターへ、そっとグラスを置く。
「じゃあ、お茶で」
「日本茶?」と問われて「はい」と返すと、ナオさんは「了解」と残して軽快に立ち上がり、静かに中の和室を抜けていった。自らの足の隣には、藺草のビーチサンダル――いわゆる畳草履が残されており、この家とナオさんを見たときとは印象がまるで異なる。ナオさんは白いシャツと黒のパンツを身に着け、廊下は至って普通で、入った部屋は西洋博物館の一角ようなものだった。この家にこれほどしっかりした和室があることも、ナオさんが甚平や畳草履を身に着けることも意外だった。
ふとナオさんのいたところへ目をやると、なにやら大きな球があった。布でできているように見え、柔らかそうだ。
不思議な魅力。その正体は、考えればいつかわかるだろうと思っていたが、そうでもないようだ。ナオさんといるときに感じるのは、確かに心地よさや幸福感なのだが、その種はどうも見えてこない。タンポポの花を根ごと抜いても、あの綿毛についた小さな種を確認できないことに似ているかもしれない。すっかり育った植物では、その根を張った種を確認することはできない。
門扉を開けて中へ入ると、縁側にナオさんの姿を認めた。甚平を着ており、白地のそれには、薄い灰色かなにかの細い線が細かく入っているように見える。わたしが「わっ」と声を上げると、彼はこちらを見て、「やあ」と微笑んだ。「今日も暑いね」と同じように続ける。
「今日もいきなりすみません」と、わたしは頭を下げる。ナオさんは「僕も退屈だったから」と言うと、「こっちは少し涼しいよ」と手招く。隣に座ると、彼は水滴に濡れた、無色の液体が入った冷茶グラスに手を付け、「なに飲む?」と問うた。麻の葉柄の布に縁取られた藺草のコースターへ、そっとグラスを置く。
「じゃあ、お茶で」
「日本茶?」と問われて「はい」と返すと、ナオさんは「了解」と残して軽快に立ち上がり、静かに中の和室を抜けていった。自らの足の隣には、藺草のビーチサンダル――いわゆる畳草履が残されており、この家とナオさんを見たときとは印象がまるで異なる。ナオさんは白いシャツと黒のパンツを身に着け、廊下は至って普通で、入った部屋は西洋博物館の一角ようなものだった。この家にこれほどしっかりした和室があることも、ナオさんが甚平や畳草履を身に着けることも意外だった。
ふとナオさんのいたところへ目をやると、なにやら大きな球があった。布でできているように見え、柔らかそうだ。