後日、無性にナオさんに会いたくなった。理由はない。悩みがあるわけでも、悲しいわけでも寂しいわけでもないのだ。特に腹が減っているわけではないのに、ふと甘いものが食べたくなる瞬間のようなものだ。そのときにそれを食べなくてはいけない理由などないが、食べたい。今ナオさんに会わなければならないことはないが、なんだか会いたいのだ。

 最低限の挨拶を添えて、今日、会うことはできるかと尋ねる文字を送った。相変わらず返信の早い人だ。会える、と言ってくれているのであろう言葉は、大げさに飾られたものだった。こちらもまた飾った言葉を使えば、文学の静かな語りが聞こえるような文字の並びだった。どんな顔をしてこの短時間でこんな文字を並べていたのだろうと考えると、なんだか笑ってしまう。これが自然体なのか、即興でこれほどの言葉が浮かんでくるのか。

 淡い水色、マキシ丈の半袖ワンピースに着替え、髪の毛は右側で一つに緩く結んだ。黒の平凡なリングゴムを隠すように、白地に水色で貝殻の模様が描かれたシュシュを着けた。シュシュにはピンクパールを模した淡いピンクの球がぷるぷると僅かに揺れる。

 足元を底の薄い白のサンダルで飾り、外に出た。もわっとした熱気が肺に重たくこびりつくようで、息苦しささえ感じる。