パズル売り場の少し手前、クッション売り場の少し奥に、植物の絵が並んでいた。その一角だけが黒を基調とし、高級感を放っている。一枚、妙に目に入ってきた絵があった。黄色のハスのような花が描かれた、どこか暗い印象の受ける絵だが、わたしには実に魅力的に映った。

 しかし、と思う。こう洒落たものを飾れるような空間が、我が家にあったかと疑問が湧いたのだ。玄関に飾るにしても、額が洒落た木製のもので、なんだか我が家の玄関には合わなそうだ。

 いや――。いざ飾ってしまえばさほど違和感はないのだろうか。合うように想像すれば、我が家の玄関もこの絵をすんなりと受け入れてしまう。その逆もしかり。

 これは、と思う。合うと思えば合うし、合わないと思えば合わないのではないか。第一印象は見る人によって変わろうが、我が家への来客は少ない。

 買うべきか、否か――。そうだ、値段は。くるくると手元の絵の向きを変え、見つけたバーコードのそばには七千五百円を表す数字が並んでいた。幸か不幸か、今の財布からすれば買えないこともない金額だ。

 ふと人の気配を感じて振り返ると、ナオさんがパズルを見ていた。こちらの視線に気づいた彼は、「いいものあった?」と優しく言う。

 わたしは体ごと彼の方を振り返った。「この絵、ナオさんだったら買います?」

 うん、と彼は即答した。「魅力を感じてるんでしょう? それなら買わない他ないでしょう」

 「七千五百円なんですよ……。バイトもしてない大学生には小さくない出費なんですよね……」今の財布の状態からすれば買えない値段であるのも事実だが、今後のことを考えると決して安いわけではないというものまた事実だ。

 「いいんじゃない? それでも買っちゃえば。やって後悔するより、やらずに後悔する方が嫌なものだよ」

 どきりとした。ああ、そうだ。わたしはそれを知っていたはずなのだ。それがこう、特別な不満を感じていない状況にあると、簡単に忘れてしまう。

 「たまにはやった後悔をしてみるのも、おもしろいんじゃない?」