「君、売店の方には行った?」ナオさんが言った。

 「ええ、行きましたよ。休憩に」

 「そうか。お土産買う予定はある?」

 「あー……特に考えてはいなかったですけど。ナオさん買います?」

 「そうしようかなと」

 「いいじゃないですか。じゃあ、わたしもちょっと見ようかな」


 売店へ向かう途中、「誰に買うんですか?」と、何気なく問うた。「友達と弟に」とナオさんは答えた。

 「へえ、弟さんいるんですか」

 「ああ、双子の」

 「へええ」

 「小さい頃はしょっちゅう間違われて、それぞれイニシャルのアルファベットの小物を持ったり、イメージカラー作ったりして」

 「ナオさんは何色だったんですか?」

 「黄緑」

 「へえ」目の色と同じだ、と思った。

 「弟は紫だった。まあ紫と言っても淡いものだったから、藤色という方が相応しいかな」

 「へええ。そんなに似てるんですか?」

 「個人的には、弟の方が柔らかい雰囲気持ってると思ってたけどね」

 「ナオさんはとげとげしてたんですか?」

 「まあ小学校低学年くらいの頃は大きな差もなかったろうけど」

 「そうなんですね」

 「弟の方が純粋な感じ」

 「褒め言葉ですか?」

 「褒め言葉褒め言葉」とナオさんは笑う。「嫌味じゃないよ」

 なんていうのかな、と続ける。「素直なんだ、すごく」

 「ナオさんは素直じゃないんですか?」

 「いいや、そんなこともないよ」

 もう脱皮したからと言う彼へ脱皮ってなんですかと笑いながら食い気味に返すと、彼も同じように笑った。