「ちなみに、ダリアが日本にきたのっていつ頃なんですか?」純粋に関心が湧いたのも勿論だが、その好奇心には、ナオさんの困った顔が見てみたいというのも見え隠れしていた。
「江戸時代の末にオランダ船でわたってきたみたいだよ。その前に、メキシコで生まれ、十八世紀に『メキシカン・アスター』の名でスペインに渡り、ヨーロッパに広がったらしい」
「へええ、すごいなあ。もう、歩く植物図鑑ですね。博士みたい」
ナオさんはこちらを見ると、「なんだか良心が痛むね」と苦笑し、「僕はそんなに物知りじゃないよ」と同じように続ける。
「あ、クレマチス」
「夏咲きのものだね」
「旅人の喜び。今のわたしにぴったりな言葉です。植物園で植物に詳しいナオさんに会えるなんて」
「マリア様にまつわる話で、イエス様と旅に出て、その道中に見つけたこの花の美しさに見惚れ、しばし休憩を取ったのが花言葉の由来なんだって」
「へええ」今のわたしは、当時の聖母と同じ思いかもしれない。旅の道中、思いがけず美しいものに出会い、しばしのんびりとした時を過ごす。聖母もきっと、こう穏やかな心持ちだったのだろう。
「江戸時代の末にオランダ船でわたってきたみたいだよ。その前に、メキシコで生まれ、十八世紀に『メキシカン・アスター』の名でスペインに渡り、ヨーロッパに広がったらしい」
「へええ、すごいなあ。もう、歩く植物図鑑ですね。博士みたい」
ナオさんはこちらを見ると、「なんだか良心が痛むね」と苦笑し、「僕はそんなに物知りじゃないよ」と同じように続ける。
「あ、クレマチス」
「夏咲きのものだね」
「旅人の喜び。今のわたしにぴったりな言葉です。植物園で植物に詳しいナオさんに会えるなんて」
「マリア様にまつわる話で、イエス様と旅に出て、その道中に見つけたこの花の美しさに見惚れ、しばし休憩を取ったのが花言葉の由来なんだって」
「へええ」今のわたしは、当時の聖母と同じ思いかもしれない。旅の道中、思いがけず美しいものに出会い、しばしのんびりとした時を過ごす。聖母もきっと、こう穏やかな心持ちだったのだろう。